社説:日米貿易協定承認 先行き極めて不透明だ

お気に入りに登録

 日米貿易協定が国会で承認された。来年1月1日に発効する。焦点だった日本の自動車と関連部品の関税撤廃は見送られた。一方で米国産の牛豚肉や乳製品の一部にかかる関税は環太平洋連携協定(TPP)と同じ水準まで一気に下がる。

 安倍晋三首相は「ウィンウィン(相互利益)」と強調するが、胸を張れるような協定内容とは評価し難い。国会審議を通じて、協定の具体的な内容、今後の行方についての政府説明も不十分と指摘せざるを得ない。来年秋に大統領選挙を控えて成果を急ぐトランプ米大統領に押し切られた面が否定できない。

 トランプ氏は多国間より2国間の協議で自国に有利な条件を得ようと、TPPから離脱。日本に対して、現在2・5%の自動車への関税を大幅に引き上げることをちらつかせて、交渉入りを迫った経緯がある。今年4月に交渉がスタートし、8月には両首脳が大枠合意、9月には協定締結に最終合意した。

 日本はTPP同様に自動車と関連部品への関税撤廃を勝ち取ることに照準を定めていた。しかしトランプ氏の圧力により、追加関税発動回避への対応に追われてしまった。

 今回は発動が回避されたものの、今後の交渉で関税が撤廃されるかどうかは不透明なままである。協定には関税撤廃について「引き続き交渉を続ける」と記載しているだけである。政府は撤廃が前提と強調しているが、その根拠を具体的に示すことが求められる。

 さらに米国が今後追加関税を発動しないとも明記していない。安倍首相はトランプ氏と確認したとして「首脳間の約束は極めて重い」とするが、トランプ氏が将来にわたって発動しないと明言したのかは不明である。これまでのトランプ氏の言動からは約束をほごにする可能性が十分にある。

 政府は協定発効に伴う国内総生産(GDP)の押し上げ効果が0・8%になるとの試算を公表した。しかしこの試算は関税撤廃を前提としたものである。撤廃時期が見通せない中で、協定の成果を大きく見せようとする思惑が透ける。

 一方、農業分野では日本側の譲歩が目立った。米国産牛肉の関税は38・5%から最終的に9%に、高価格帯の豚肉は4・3%からゼロに引き下げられる。消費者にとっては安く購入できるようになるものの、畜産農家は厳しい競争にさらされる。農家へのきめ細かな支援が急務である。

 国会審議では、野党から協定に関する情報公開を求められたが、政府は応じず、与党が数の力で押し切った。自動車の関税を巡っては疑問な点が残る。政府はそれに答える責任がある。

 日本は引き続き自動車と関連部品の関税撤廃を求める方針だが、実現へのハードルは高い。十分な戦略を練った上での、粘り強い交渉が重要である。