社説:地上イージス 「新屋」見直しは当然だ

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 政府は地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、秋田市の陸上自衛隊新屋演習場への配備計画を見直す方向で検討に入った。

 新屋は住宅地や小中学校、高校などに近接しており、なぜこんな場所に防衛施設を配備するのかが疑問視されていた。ミサイル攻撃やテロの対象になりかねないほか、レーダーが発する電波の影響も懸念される。どんな対策を講じたとしても、住民の不安は拭いようがない。配備計画の見直しは当然であり、むしろ遅過ぎる判断だと指摘せざるを得ない。

 防衛省は地上イージス配備の理由に、核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮の脅威を挙げる。新屋演習場とむつみ演習場(山口県萩市、阿武町)に1基ずつ配備することによって日本全土を守ると説明。国有地であることから速やかに配備ができるほか、装備を設置する広さがあるとしていた。

 だが住民の生活の場との距離はほとんど考慮されていなかったと言っていい。新屋はレーダー設置を予定していた場所から住宅地まで700メートルしか離れておらず、安心して暮らせる環境に程遠いことは常識的にみても分かる。にもかかわらず適地だとしていたのだから、住民をないがしろにしたと言われても仕方がない。猛省を促したい。

 防衛省の安易な姿勢は、5月に公表した適地調査がずさんだったことで浮き彫りになった。根拠となるデータに誤りがいくつもあることを本紙が報じ、調査は「新屋ありき」だったのではとの疑念が膨らんだ。住民説明会で職員が居眠りしていたことも含め、批判が殺到した。

 新屋演習場周辺の16町内会でつくる「新屋勝平地区振興会」が配備反対を決議したのに他の地区も続くなど、反対運動は広がりを見せていた。さらに7月の参院選では新屋配備に反対する野党候補が与党候補を下し、県民の反対意思が明確に示された。その声の高まりに、政府が軌道修正を余儀なくされ、今回ようやく見直しを検討するに至ったとみるべきだろう。

 防衛省は現在、青森、秋田、山形3県の計19カ所を対象に再調査しており、来年3月をめどに改めて適地を選びたいとしているが、住民の理解を得るのは容易ではない。

 再調査に当たっては住宅地との距離を考慮するとしているものの、どれぐらい離れていれば安全なのかは不明確だ。そもそも同省はこれまで、新屋の他に適地はないとまで言い切っていた。今度はどんな理由を示して、そこがふさわしいと説明するつもりなのか。

 山口県のむつみ演習場にしても、阿武町長は演習場の数百メートルの距離には住宅もあるなどと訴え、配備反対を鮮明にしている。地元の意向を踏みにじって配備を強行することは断じて許されない。政府の対応が問われている。

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