社説:重度障害者の就労 一層の支援拡充が必要

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 働いて自立した生活を送りたいと望む重度障害者を支援するために、企業が障害者の雇用に伴い介助者を配置した場合に支払われる助成金が、来年度から拡充される見通しとなった。厚生労働省が方針を固めた。

 手足を自由に動かすことが困難で、入浴や食事、排せつなど生活全般を介助してもらうことが必要な身体障害者ら、重度障害者の中には、環境や業務内容によっては十分働いて成果を上げられる人は多い。そうした人たちの希望や能力を生かせる「共生社会」の実現は大きな課題である。助成金の拡充が、重度障害者の社会参加を促進することにつながることが期待される。

 現在も、企業が重度障害者の職場に介助者を配置すると、必要な経費の4分の3を助成するなど多様な支援制度がある。それらの助成率の引き上げを図る。財源は、障害者の法定雇用率を下回った民間企業が支払う納付金を充てる。

 大企業に比べて中小企業は障害者雇用が低調な傾向にあるため、大企業より高い助成率にすることを検討する。詳細は今後決められる。

 従来の助成金は、支給期間が1カ月しかないものもあるなど、企業側の使い勝手が必ずしも良くなかったとの指摘がある。使いやすさにも十分配慮し、企業が積極的に重度障害者の雇用に踏み出すよう促すことが必要だ。

 ただし、助成率を上げればただちに雇用が進むとは言いきれない面もある。従来の助成金制度では、重度障害者の人件費に加え、介助者を配置するコストの一部を負担することなどに二の足を踏む企業が多かったからだ。

 重い障害があり、7月の参院選で初めて当選したれいわ新選組の2議員は、積極的に重度障害者の社会参加を進める訴えを続けている。厚労省の助成金拡充の方針は、2人の活動を受けた面がある。

 2人が求めているのは、24時間、ホームヘルパーによる介助を受けられる重度訪問介護制度の見直しである。同制度は、就労や通勤など「経済活動」の間は、公的補助を受けられない仕組みになっている。雇用主が負担すべきとの考え方に立っているからだ。

 助成金活用に積極的な企業が少なく、重度訪問介護も受けられないために、働くのを諦める重度障害者が多いのが現状である。働いている時や通勤中も重度訪問介護を受けられるように制度が改正されることは、多くの障害者の願いだ。

 重度障害者の自立と社会参加を進める上で、助成金拡充をゴールとしてはならない。さらに踏み込んで、重度訪問介護制度の見直しに取り組むべきだ。厚労省はもちろん、2議員の問題提起を受けた参院をはじめとする国会の場で、議論を深めることが求められる。