社説:記述式見送り 制度設計お粗末過ぎる

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 2020年度に始まる大学入学共通テストを巡り、萩生田光一文部科学相は国語と数学への記述式問題の導入を見送ると発表した。

 共通テストは現行の大学入試センター試験の後継として、21年1月に1回目が行われる。目玉は国語と数学の記述式問題、英語の民間検定試験だった。先月見送りが決まった英語の民間試験に続き、国語と数学の記述式も同様の結果となったことで、大学入試改革の旗を掲げた共通テストは土台から揺らぐ事態となった。教育現場を混乱させた責任は重いと指摘せざるを得ない。

 記述式はマークシート式と違って回答がさまざまあるため、よく吟味して採点しなければならない。受験生は50万人超に上る。2次試験に間に合うよう20日以内で採点するのは容易ではない。その中で果たして公平さ、公正さは担保されるのかが大きな問題になったが、懸念は払拭(ふっしょく)されなかった。委託された業者が人手確保にアルバイトの手を借りる案を示したこともあり、泥縄式の展開に不安が増幅した。

 自己採点を巡る問題も大きかった。多くの受験生は、1次試験の自己採点を基に志望校を決めている。採点基準のあいまいな記述式問題が含まれることによって、その見極めが難しくなるのは必至だ。昨年試行調査した際には、自己採点と実際の成績の不一致が目立つ結果となり、その後も不安は解消されなかった。

 あまりにもお粗末な制度設計ではないか。受験生を第一に考えて構築したとは、到底思えない。従来にはない問題が出されることに備えて、これまで地道に学習準備を進めてきた生徒たちからは「振り回された」「中身を詰めていない」などと憤りの声が上がっているが、当然である。

 懸念の声は、かねて教育現場から上がっていた。にもかかわらず、文科省の対応は極めて鈍かった。不備の多い制度だと分かっていながら、なぜ批判が高まるまで動こうとしなかったのか。

 萩生田氏は会見で「安心して受験できる体制を早急に整えることは困難と判断した」などと記述式見送りの理由を述べたが、遅きに失した印象は否めない。文科相就任後、速やかにこの問題を検討し、方針転換すべきだった。

 民間検定試験も記述式問題も、安倍政権が知識偏重の教育からの脱却を目指して打ち出した共通テストの目玉である。論理的な思考力や表現力重視といった方向性は否定しないが、理念先行で肝心の制度がほころびだらけでは、教育現場が戸惑うだけだ。猛省を促したい。

 文科省は何が問題だったのかを、経緯を含めて十分検証すべきである。その上で、大学入試改革の在り方を根本から見直してもらいたい。