北斗星(12月25日付)

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 秋田市から見る太平山の最高峰奥岳(1170メートル)は、山頂が雪に覆われて真っ白だ。晴れた日には夕日を浴びて、さんぜんと輝いて見えることがある。あまりにも神々しくて言葉を失う

▼かつては神が住む場所と信じられてきたこともうなずける。麓から一気にそそり立つ険しい山容は大規模な開発の手を拒むかのようだ。今に至るまで奥深い自然が残り、旭又一帯はツキノワグマの楽園として知られる

▼三角形の美しい山は古来、薬師如来が祭られることが多い。太平山も長い間、薬師を本尊としてきた。江戸中期の元禄時代からはそこに地方神の三吉大神が加わる(太平山三吉神社総本宮刊「太平山の歴史」より)

▼三吉大神は地元の城主が修行して神になったとの言い伝えがあるが、山中の異人を示す「山鬼(さんき)」に由来するなど諸説ある。いずれにしても怪力の神、勝負の神として長い間、庶民のあつい崇拝を集めてきた

▼神像として有名なのは日本画家・平福穂庵(すいあん)が描いた荒ぶる神の姿だ。県立博物館で開催中の企画展「山と生きる」には両脇に大砲を抱えた姿の掛け軸が展示されており、印象的である。戊辰戦争のときに各地に出没して味方を援護した伝説によるものだという

▼ほかにも杯を持っていたり、つえをついた総髪の老人だったりと、実にさまざまだ。イネの梵天や大豆を盛った杯を持つ像もある。荒ぶる神ではあるが、どこか親しみを感じられる「三吉さん」の素顔の一端を垣間見ることができる。

企画展「山と生きる」の詳細はこちらから

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