社説:国政この1年 長期政権の弊害著しい

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 「安倍1強」の弊害が依然として目に余る。そんな印象が拭えない1年だった。

 2012年12月の第2次安倍政権発足から7年。06年に始まった第1次政権を合わせ、通算では歴代最長の8年を数える。衆参とも与党で過半数を握る安定した政治基盤に立つ安倍晋三首相には、反対意見にも謙虚に耳を傾け、多くの国民が納得できる公正な政治を行うことが求められるが、実態はどうだったか。さまざまな場面で数の力によるおごりが目立ち、国民を失望させたと言わざるを得ない。

 首相主催の「桜を見る会」にそれは顕著だ。各界で功労のあった人を慰労する会の趣旨に反して、安倍首相の地元・山口県の関係者が多く招かれるなど「私物化」が指摘された。反社会的勢力の参加も疑われている。それが本当なら公的行事にあるまじき事態であり、国会で真相を解明するのは当然だ。

 にもかかわらず政府は、招待者名簿はすでに廃棄し、電子データも消去したとの一点張り。真相解明どころか、この問題をなかったことにしようとしているように見える。これでは国民の理解は得られない。

 野党が安倍首相に予算委員会への出席を求めたのに対し、与党は拒み続けた。都合の悪いことには答えなくてもいいというのではあまりにも身勝手だ。このままでは国会は形骸化してしまう。政治不信も募る一方だ。

 安倍政権の身勝手な姿勢は夏の参院選前にも表れた。老後を過ごすのに年金では足りず、夫婦で2千万円の蓄えが必要だとする金融庁審議会の報告書を、選挙に不利になるとみて受け取らず、なかったことにした。厳しい現実から国民の目をそらす無責任な行動と捉えられても仕方がない。

 成果はと見れば、乏しいままだ。安倍首相肝いりの大学入試改革は出直しを迫られた。2021年1月に迫った共通テストの目玉だった英語の民間検定試験は地域格差、経済格差を助長しかねないなどの理由で、国語と数学の記述式問題は採点の公平性が担保できないなどの理由で、共に見送りとなった。甘い制度設計で教育現場を混乱させた責任は重い。

 成長戦略の柱に位置付けられている統合型リゾート施設(IR)事業にも暗雲が立ちこめている。副大臣として事業を担ってきた現職国会議員が、収賄の疑いで逮捕されたのだから深刻だ。ギャンブル依存症が増えるなどの懸念があり、反対論もいまだ根強いだけに、政権への打撃は大きい。

 不祥事や失言による閣僚の辞任も相次ぎ、安倍首相の任命責任が問われた。森友学園問題や加計学園問題も依然として疑念が払拭(ふっしょく)されておらず、くすぶったままだ。

 求められるのは、政治の立て直しだ。そのためには安倍首相が真摯(しんし)な姿勢で説明することが不可欠である。