社説:今年の国政 政治への信頼取り戻せ

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 安倍晋三首相は政権復帰を果たしてから7年を超え、通算の在職日数は憲政史上最長を更新し続けている。まれに見る長期政権からは「安倍1強」という数の力を背景にした強引な政権運営ばかりが目に付く。安倍首相にとって、政治への信頼を取り戻せるかどうかの真価が問われる2020年となる。

 振り返れば、安全保障関連法、働き方改革関連法、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法など日本の将来に大きく関わる数々の法律が、審議が尽くされることなく採決され、成立した。政権与党の国会軽視は甚だしく、言論の府としての存在意義が問われる。

 さらにここにきて、そのおごりや緩みが噴出している。「公的行事の私物化」と批判を浴びた首相主催の「桜を見る会」への安倍首相の説明は十分とは認められない。森友学園問題や加計学園問題についても同様である。

 一連の問題から浮かび上がるのは、自ら触れられたくない問題には答えずに逃げ切ろうとする政権と、それを忖度(そんたく)して公文書の廃棄、隠蔽(いんぺい)を繰り返す官僚の姿である。官僚は官邸の顔色ばかりを気にして仕事をしていると指摘せざるを得ない。

 信頼回復には、時間をかけて納得できるまで審議する国会運営と、さらにはこれまでの疑念に安倍首相自らが丁寧に説明することが不可欠である。今月召集の通常国会は、安倍首相が説明責任を果たすことからスタートするべきである。

 衆院議員の任期は来年10月までで、残り2年を切った。いつ解散・総選挙が行われても不思議ではない。安倍首相が解散を「ちゅうちょしない」と明言していることからもうかがわれる。

 現段階で最有力視されている解散のタイミングは、東京五輪・パラリンピック後の秋から冬にかけての時期である。ただ政治の世界は「一寸先は闇」である。電撃的な早期の解散もあり得る。

 安倍首相は政権復帰を果たした12年の衆院選から昨年の参院選まで大型国政選挙で6連勝中である。「安倍1強」を許した責任の一端は「多弱」とも称される野党にもある。立憲民主・国民民主の両党などが合流に向けた協議を重ねているが、いまだ着地点は見いだせていない。衆院選にも影響するだけに、今後の協議を注視したい。

 安倍首相の悲願である憲法改正の行方も焦点である。レガシー(政治的遺産)と呼ばれる歴史的な実績づくりに向け、「私の手で成し遂げたい」と強調する。しかし「改憲スケジュールありき」と前のめりになることがあってはならない。

 昨年の参院選で改憲勢力は国会発議に必要な3分の2を割り込むなどハードルは高くなっている。本当に改憲が必要なのかも含め、慎重で幅広い議論を尽くすことを国民は求めている。