社説:台湾・蔡総統再選 中国と対話実現目指せ

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 台湾総統選は、台湾独立志向の与党、民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が、親中路線の最大野党、国民党の韓国瑜・高雄市長らに総統選史上最多の得票数で圧勝し、再選を果たした。

 台湾の有権者は、中国が求める「一国二制度」による中台統一に対し明確にノーを突き付けた。蔡氏は選挙後、中国に平和的で対等な立場での対話を呼び掛けた。従来、武力行使の可能性も否定しない姿勢を見せてきた中国との間にどのように安定した関係を築いていくか、蔡氏の手腕が問われる。

 民進党は一昨年の統一地方選で、年金改革など内政問題での批判の高まりを受け大敗した。蔡氏は党主席辞任に追い込まれ、一時は再選が危ぶまれた。しかし、総統選では統一に断固反対する姿勢をアピールした。昨年来、香港でも中国への抗議活動が続いていることを追い風に、中国を厳しく批判し支持を広げた。

 一方の韓氏は中台交流発展を訴え、香港問題では中国批判を避けた。その結果、中国に近すぎる印象を与え、マイナスに働いた。

 一国二制度は、社会主義の中国国内で資本主義を併存させる。中国の習近平国家主席は昨年1月、中国主導の一国二制度により中台統一を目指す考えを明らかにした。そこから総統選の流れが変わったと言える。

 既に制度が適用されている香港では、言論や集会の自由など「高度な自治」が保障されるとされた。実際には中国が介入を強めて自治を阻害し、反中国デモの盛り上がりにつながっている。こうした中国の動きこそが、蔡氏圧勝の原因となった。中国は高圧的な姿勢を改めるべきだ。

 総統選だけでなく、同時に行われた立法委員(国会議員)選挙でも民進党が過半数を維持し勝利した。香港の昨年11月の区議会選挙で、反中国デモを支持する民主派が圧勝したのに続き、中国にとっては手痛い親中派の敗北である。

 蔡氏は当選後、中国に対話を呼び掛けると同時に、行政改革や経済振興、国家安全政策を通じて主権の擁護に努める方針を示した。中国は選挙結果を重く受け止め、台湾の民意を尊重して蔡氏との対話に応じることが求められる。

 現在でも中国本土に進出する台湾企業は少なくない。経済が減速する中国にとって台湾企業の投資は貴重である。経済交流を着実に積み重ねることで、相互理解を深めることが大切だ。

 安倍政権は蔡氏の再選を歓迎している。一方、春には習氏が国賓として来日する。安倍晋三首相は習氏に対し、台湾の民主主義を容認するよう積極的に働き掛けてほしい。自由と民主主義を守る点で日本と台湾は価値観を共有する。それを武力を行使して破壊することは、決して受け入れられないことを伝えるべきだ。