社説:文化財の防火対策 訓練を通じ意識高めよ

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 国が定める「文化財防火デー」(1月26日)に合わせ、国宝や国の重要文化財などを対象にした防火訓練が全国各地で行われる。地域の宝である文化財を守り、後世に伝えていくことの大切さをあらためて認識する機会にしたい。

 県内では重要文化財に指定されている建物が27カ所(59棟)ある。このうち文化財防火デーに合わせて訓練が行われるのは半数に近い13カ所で、それぞれ23~27日の実施を予定している。このほか9カ所は時期をずらして行うことになっているが、残り5カ所では、訓練自体が計画されていない。

 訓練を定期的に行うことは火災時の初動体制を確認するだけでなく、防火設備の状況をチェックできるという点で極めて重要である。今年は幸い積雪が少ないものの、設備が雪に隠れてしまうことが多いため、特にこの時期に行うことが有効なのだ。訓練を欠くことは万が一の際の対応に遅れが生じることにつながりかねない。防火意識を高めるためにも、訓練の励行を求めたい。

 ほかにも国登録有形文化財や県指定有形文化財など、県内で歴史的価値のある建物は多数に上るが、国宝や重要文化財と違って国から防火対策費が助成されないことなどから、備えはおろそかになりがちだ。所有者任せでは心もとない。貴重な財産を守るためには、自治体のサポートも必要だろう。

 住民団体が見回り活動を行って文化財の防火に努めている地域もある。だが過疎化や高齢化の進展に伴い、それを担う住民も減ってきているのが実態だ。将来にわたり、どのようにして歴史ある建物を守っていくべきか。自治体は消防や住民らと話し合いながら、対策を探るべきだ。

 昨年4月にパリの世界遺産ノートルダム寺院(大聖堂)が火災で焼失したことは世界の人々を悲しませた。10月に起きた沖縄県那覇市の首里城火災も衝撃的だった。この2件は、歴史的に価値の高い建物をいかに守るべきか、防火の在り方をあらためて問うこととなった。

 文化庁は同寺院の火災を受け、文化財の防火対策を徹底するよう都道府県に通知した。同時に国宝や重要文化財に指定されている建物を対象に防火対策の実態を緊急調査した。

 調査の結果、県内の重要文化財59棟のうち、消火器が設置されていなかったのが7棟あることが判明した。このうち5棟は自動火災報知器も未設置だった。いずれも火災の危険性が高い木造の建物であり、早急に設置することが求められる。

 文化財は住民にとって重要な地域のシンボルであり、心のよりどころにもなっている。火災で焼失することによる喪失感は計り知れない。最悪の事態を招かないよう、普段から十分な防火対策を行っておくことが肝要である。