社説:通常国会開幕 疑問に正面から答えよ

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 通常国会が開幕し、安倍晋三首相が施政方針演説を行った。第2次安倍政権は2012年末の発足から数えて8年目。異例の長期政権である。これまでは数の力によるおごりが目立った。今国会ではこれまでの姿勢を改め、謙虚に臨まなければならない。

 ところが施政方針では、政権を揺るがす大きな問題となっている首相主催の「桜を見る会」を巡る問題に触れなかった。不都合な問題に正面から向き合うことなく、批判をかわして逃げ切ろうとする意図が見え見えだ。これでは国民の理解が得られるはずがない。

 桜を見る会を巡っては、安倍首相の地元である山口県の後援会関係者が大勢招待されて「私物化」が疑われたほか、預託商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」の関係者を招いたとの疑念も生じ、会の在り方が根本から問われる事態となった。さらには招待者名簿の廃棄など、ずさんな管理実態が次々明るみに出て、国民の政治や行政に対する信頼は失墜した。

 政府は当初、桜を見る会の一時中止を決めて事態の収拾を図ったが、まるで臭い物にふたをするかのようだった。その後も十分な説明がなく、疑念は膨らんだ。信頼回復のためには、今国会での実態解明が急務だ。安倍首相は一つ一つの疑問に丁寧に答えるべきである。

 施政方針では、大学入試改革についても言及がなかった。来年度から始まる共通テストの目玉に据えられていた英語の民間検定試験と国語と数学の記述式問題が、いずれも制度設計の甘さから先送りとなったのだから深刻だ。何が問題だったのかを検証し、早期に今後の方向性を打ち出す必要がある。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業について、担当する内閣府副大臣を務めた衆院議員が収賄容疑で逮捕された汚職事件も政権には大打撃だ。議員は再逮捕され、他の複数の議員も関与を取りざたされている。事件はさらに拡大する可能性があり、予断を許さない。

 ギャンブル依存症増加などにつながるとして、かねて反対論が根強いだけに、反発の声が強まるのは避けられない。事業を利権の温床にしてはならない。このまま進めるべきなのか、国会で徹底議論する必要がある。

 安倍首相が施政方針で特に強調したのは「全世代型社会保障」だ。働き方の変化に合わせて年金、医療、介護の改革を進めるとした。人口減と少子高齢化が進む中、社会保障制度をどう変えていくかは待ったなし。その議論を加速させるためにも、桜を見る会などの問題に真摯(しんし)に対応することが不可欠だ。

 閣僚が公職選挙法違反を問われて相次ぎ辞任に追い込まれたことも含め、安倍政権は失態続きだ。森友問題や加計問題もくすぶる中、国民の信頼回復は容易ではないことを肝に銘じなければならない。