北斗星(1月29日付)

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 1980年代後半は、日本に才能あるロックバンドがきら星のごとく現れた時代だった。その一つに「ECHOES(エコーズ)」があった。リーダーだった横手市増田町出身のドラマー今川勉さんが亡くなった。享年60

▼エコーズは、後に芥川賞作家となった辻仁成さんが作詞作曲とボーカルを担当。不登校やいじめに悩む子ども、社会になじめない孤独な若者らを描いた歌詞と、今川さんのドラムを核にしたビートの利いたサウンドで根強い人気があった

▼プロとしての活動は85~91年のわずか6年間。今川さんの訃報に、パリ在住の辻さんは「寂しい。それでも、歌い続けます。あの日の気持ち忘れないために」とツイートし、共に歩んだ若き日々に思いをはせた

▼バンド解散後、今川さんは解離性大動脈瘤(りゅう)で倒れ、左の手足が思うように動かせなくなった。それを機に帰郷。地元の若者らとバンドを組んで新たな才能発掘に努めるなど、音楽活動を続けた

▼2011年の東日本大震災後、CDを津波に流されたという被災地のファンから、エコーズの音楽を聞きたいとのメールが今川さんの元に寄せられた。辻さんらメンバーと連絡を取り合って、福島市と東京都内で再結成ライブを行った

▼エコーズ全盛期のような迫力あるドラムを聞かせるのは無理でも、演奏をやめることはなかった。「諦めちゃ駄目だ。こつこつやることで、いつかは違う自分に到達できる」と語っていた。最後まで音楽一筋の人生だった。