社説:海自艦中東派遣 国会の場で議論尽くせ

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 緊張が続く中東海域を航行する日本関係の船舶の安全を確保するため、海上自衛隊の護衛艦が出航した。既に活動を始めているP3C哨戒機と共に、今月下旬から現場海域で情報収集を始める。同盟国である米国による有志連合参加の呼び掛けに対し、友好国であるイランにも配慮した結果、有志連合とは別の「独自派遣」となった。

 派遣は12月に閣議決定された。その後、米軍がイラン革命防衛隊精鋭の司令官を殺害、イランが報復攻撃した。米とイランの全面衝突は回避されたが、火種はそのままだ。中東情勢が大きく変化し反米勢力による攻撃の危険もある中、政府が方針を見直さなかったのは疑問が残る。これからでも国会の場で議論を尽くすことが求められる。

 国会による事前承認が必要ない防衛省設置法の「調査・研究」に基づき、1年単位の長期にわたって部隊を派遣するのは初めてだ。法律上は防衛相の命令だけで実施できるが、「調査・研究」で済ませるべき派遣とは思われない。

 河野太郎防衛相は現在の中東情勢について「特定の国が日本船を攻撃する状況にはない」と繰り返すが、十分な根拠を示していない。自衛隊の海外活動が歯止めなく拡大しかねない点でも問題は大きい。

 中東海域は日本で消費する原油の約9割が通過する大動脈である。護衛艦はオマーン湾とアラビア海北部で、航行する船舶の把握や不審船の警戒に当たる。昨年6月に日本の海運会社運航のタンカーが攻撃されたイラン沖のホルムズ海峡やペルシャ湾は有志連合が監視に当たっており、海自の活動範囲外だ。安全確保が目的というなら、活動範囲が適切かは疑問で、やっていることがちぐはぐである。

 不審船による関係船舶へのテロ攻撃など不測の事態が発生した場合、防衛相は首相の承認を得て海上警備行動を発令する。国会承認を得ずに派遣された護衛艦がなし崩し的に武力を行使しては、文民統制の原則が失われかねない。国会は政府を監視する責任を果たすべきだ。

 海上警備行動で正当防衛と緊急避難の範囲で武力使用が可能なのは、被害を受けたのが日本籍の船である場合だけだ。日本に原油を輸送する船は大半が外国籍であり、護衛艦はそれらの船に近づく不審船に接近し、警告を発することしかできない。緊急時は米軍頼りとなる。

 このため、海自は収集した情報を米軍と共有化する。海自が米軍と一体と見なされ、反米勢力から攻撃される危険性は否定できない。国会も、海自の活動が憲法が禁じる他国の武力行使との一体化に当たらないかどうか、議論を深める必要がある。

 中東の緊張緩和のために最も重要なのは、米国とイランが新たな合意に向けた交渉のテーブルに着くことである。そのための外交努力こそが日本に求められている。