北斗星(2月12日付)

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 野球の日本代表チームで主将を務めた元ヤクルトスワローズ内野手の宮本慎也さんは、最も影響を受けた指導者に、野村克也さんの名を挙げる。プロ入りしたが、自身の力のなさを痛感していた。そんなとき、当時監督を務めていた野村さんに脇役として生きる道を示された

▼練習後のミーティングで野村さんが「目立たない脇役でも、適材適所で仕事ができれば貴重な存在になる」と語ったことが忘れられない。著書「意識力」(PHP新書)にそうつづっている

▼ミーティングは打者心理をどう読むかといった戦略的なことばかりでなく、いかに生きるべきかなど人生哲学に触れる内容が多かったという。選手として能力を向上させるだけでなく、人としても大きく成長してほしいとの願いがあったのだろう

▼野村さんが亡くなった。84歳。ベンチで貫禄たっぷりに采配を振るう指揮官の印象が強い。データ重視の「ID野球」を掲げ、決して強いとは言えなかったヤクルトを3度にわたり日本一に導いたのは、大きな勲章だ

▼歴代2位の657本塁打を放ち、戦後初の三冠王にも輝いた歴史に残る強打者。かつ名捕手でもあった。高い実績や名声におごることなく、戦術や指導法の研究を重ね、知将に名を連ねるまでになった

▼テスト生としてプロ入りし、努力を重ねた苦労人である。だからこそ、プロでいかに生き抜くべきかを一人一人に指南。主役も脇役も共に輝かせ、野球界を盛り上げた。その功績は大きい。