社説:里親制度 周知図りなり手増やせ

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 虐待や経済的事情などが理由で実の親と暮らせず、保護を要する子どものうち、里親が養育する「里親委託率」が本県は低い。2013~17年度は1割に満たず、全国最下位だった。制度を推進する国の方針を受け、県は20年度から里親の増加を目指す取り組みに本腰を入れる。

 まずは制度の周知を図り、里親になりたい人の登録を進めることが必要だ。さらに里親と子どもの組み合わせ(マッチング)の機会を増やし、委託後の支援を充実させるなど、手厚くきめ細やかな対応が求められる。

 元々日本は保護が必要な子どもの養育は施設が中心で、里親委託率は高くなかった。従来より里親制度を重視する児童福祉法の改正が16年に行われ、厚生労働省は里親増加に取り組んでいる。家庭に近い環境で育てられた方が特定の人と密接な関係を保ち愛着を深められる点で、子どもの成長に好ましいとの考え方が広まってきたためだ。

 里親は、児童相談所が18歳未満の子どもについて必要と判断した場合に委託される。県内で虐待などの問題があって親元を離れた子どもは17年度、198人だった。このうち里親に養育されたのは19人で、委託率は9・6%。全国平均の19・7%を大きく下回った。

 県は本年度、里親の推進を明記した「県社会的養育推進計画」を策定した。実施期間は20~29年度で、この間に委託率を40%に引き上げる目標である。20年度予算案には約2千万円を盛り込んだ。国が示した目標は50~75%だが、まずは県目標を着実に達成させたい。

 県内で里親への委託が進まなかった理由としては、制度が十分知られておらず里親のなり手が少ないことに加え、全県に計4カ所ある児童養護施設が養育の場として定着してきたことがある。しかし、虐待を受けて育った人が親になってから、自ら虐待を繰り返してしまう「虐待の連鎖」を止める上で、里親による養育は意義が大きいと考えられている。そんな観点からも、里親を増やすことは必要だ。

 里親登録者は09年度の57組から徐々に増え、17年度は71組だったが、委託率の目標を達成するにはまだ少ない。県は20年度から、小中学校のPTAや行事に合わせて説明会を開催するなどして制度を周知し、登録者の増加を図る。施設で暮らす子どもと登録者を面会させ、共に生活体験をするマッチング事業も行う。こうした事業により、里親への委託が進むことを期待したい。

 成長につれて子どもの悩みは多様になる。虐待などが原因で心身に傷を負った子どもは、里親への反発を繰り返すことがあるという。

 そうした場合に里親がどう対処したらいいか、児童相談所などがしっかりバックアップする体制が欠かせない。里親同士が悩みを語り合える場を設けることも大きな支えになるだろう。