社説:首相、やじを謝罪 疑惑への説明を尽くせ

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 安倍晋三首相は衆院予算委員会で、自らがやじを飛ばした問題について謝罪した。行政府の長が、言論の府である国会で臆面もなく、やじを飛ばすなどあってはならないことであり、議会制民主主義を根幹から揺るがす問題である。安倍首相には猛省とともに、浮上している数々の疑惑に真摯(しんし)に答弁することが求められる。

 やじが飛び出したのは12日の衆院予算委での審議中でのことである。立憲民主党の辻元清美氏が「桜を見る会」の問題などを取り上げ「タイは頭から腐る」と首相を非難し、質問を終えた。その直後に首相から「意味のない質問だ」と驚くべき発言が出た。

 首相はやじを認めた上で「罵詈(ばり)雑言の連続で、私に反論の機会が与えられなかった。ここは質疑の場だ」と釈明していた。

 国会は議論を通じて、国の方針や施策を決めたり、与野党がそれぞれの主張を国民に披露したりする場である。内閣法制局の国会での説明によると、質問は議員の権利であり、それに対して首相や閣僚が答弁するのは義務である。首相が「質疑の場」というのであれば、それにふさわしい答弁こそが求められる。

 だが桜を見る会などへの安倍首相の答弁はあまりにおざなりである。招待者名簿の存否を確認する再調査を拒否、公文書のずさん管理については「旧民主党政権時代を踏襲した」と言い訳し、招待者増は「長年の慣行」とはぐらかす。都合の悪いことは隠して逃げる、“前例”を持ち出して正当化する、他者に責任を転嫁するといった答弁が目立つ。正面から答えようとする姿勢は見えない。

 地元事務所名で参加を募る文書が後援者に送られていた問題では「幅広く募っているという認識だった。募集しているという認識ではなかった」と意味不明な答弁も飛び出した。

 やじのほかにも、質問者の野党議員を「うそつき」と非難する場面もあった。謝罪を求められると「非生産的な政策とは無縁のやりとりを長々と続ける気持ちは全くない」と拒否した。

 首相が求める政策論争に入るためには、まず第一に疑惑に対して説明責任をしっかりと果たすことである。共同通信社の世論調査では桜を見る会の疑惑に関し首相が「十分に説明しているとは思わない」との回答が84・5%に上っている。やじを含めて安倍首相の答弁に多くの国民が納得していない。

 このままでは、国会に対しての国民の信頼は失われるばかりである。政策論争を阻んでいるのは、首相自身であることを自覚すべきである。

 首相以外でも、公文書管理を担当する閣僚はしどろもどろな答弁を繰り返し、予算委員会をコントロールする委員長は政府寄りの運営が目立つ。国会本来の機能を取り戻すために、政府、自民党はあらためて事態の深刻さを認識する必要がある。