社説:診療報酬改定 勤務医の環境改善急げ

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 医療サービスの価格である診療報酬について、4月からの改定内容が決まった。特に勤務が過酷な救急医療で患者受け入れ実績の高い病院への報酬を増額し、勤務医の労働環境の改善を後押しする。

 報酬増額分の使い方は病院の判断だが、残業減少に向けて責任ある対応が求められる。医療の質低下を招かないためにも、勤務医の負担軽減を急ぎたい。

 診療報酬は、医師や薬剤師の技術料や人件費に当たる「本体部分」と、薬や医療材料の価格である「薬価部分」からなり、2年ごとに改定される。今回は全体で0・46%の引き下げだが、本体部分は0・55%の引き上げで600億円増となる。勤務医の働き方改革にはそのうち126億円が投じられ、他にも既存の基金で143億円程度を手当てする。

 救急車やドクターヘリによる搬送件数が年2千件以上の病院に限り、入院料に5200円を上乗せする。患者の窓口負担はそのうち1~3割で、最大900病院が対象となる。救急搬送が年千件以上の病院に対しても、夜間や休日の患者受け入れ体制を強化した場合に報酬を手厚くする。

 紹介状なしで大病院を受診した患者から、診察代とは別に追加料金を徴収する制度は、対象の病院を増やす。軽症の場合は身近なかかりつけ医を利用することを促し、大病院の勤務医が重症患者に専念できるようになることが期待される。

 これらの病院は報酬増額分を新たな医師や職員の確保に充てるなどして、労働環境の改善を進めなければならない。厚生労働省は、最終的に国民が負担することになる多額の公費を投じる以上、個々の病院の状況をつぶさに把握し、制度の効果を検証して国民に説明するべきだ。

 今回の報酬改定の背景には、夜間当直や緊急時の呼び出しが頻繁な勤務医の労働実態がある。2~6カ月にわたり月平均80時間を超える残業があった場合に「過労死ライン」とされる。2016年調査では勤務医の4割超がこの水準を超えていた。

 長時間労働は本人の心身を害するだけでなく、医療事故を引き起こしやすくなる。24年度から勤務医の残業時間の罰則付き上限規制が始まる。それに向けて、病院の取り組みを加速させたい。

 新たに保険適用の対象となるものもある。ギャンブル依存症の治療や加熱式たばこを吸う人の禁煙治療、遺伝性乳がんと診断された患者が予防的に健康な乳房を切除する手術などだ。

 妊婦が産婦人科以外の外来を受診する際、初診料や再診料に上乗せする「妊婦加算」は正式に廃止された。妊娠と直接関係ない場合も加算され、批判が殺到して制度は凍結されていた。本来は妊婦や胎児に配慮ある診察を促すのが目的の制度だった。厚労省は妊婦ら患者本位の医療を目指さなくてはならない。