社説:大館に「青ガエル」 観光への積極活用図れ

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 JR渋谷駅(東京都渋谷区)のハチ公前広場に置かれ「青ガエル」の愛称で親しまれてきた鉄道車両が、大館市のJR大館駅前に移設されることが決まった。市は、7月ごろから市民や観光客の休憩場所として活用することを検討している。

 大館と渋谷の両市区は、大館生まれの秋田犬「忠犬ハチ公」が取り持つ縁で、長年にわたり多様な交流を重ねてきた。その蓄積があったからこそ、今回の移設につながったと言える。青ガエルを観光振興に積極的に活用し、大館のアピールを強めていきたい。

 青ガエルは、渋谷区に本社がある東急電鉄が1954~86年、渋谷と横浜市方面を結ぶ東横線などで運行していた車両である。丸みを帯びた緑色の外観から青ガエルの愛称で親しまれていた。渋谷区は2006年に譲り受け、ハチ公前広場に観光案内所として設置した。車体の長さが11メートル、重さは約11トンあり、待ち合わせ場所として人気スポットとなっている。

 渋谷駅周辺では現在、大規模な再開発が進行中だ。それに伴い区は、渋谷のシンボルの一つとして定着した青ガエルを区内に移設することを検討したが、最終的には「ハチ公の里・大館の知名度が高まれば」と無償譲渡を提案した。市は大館駅前の観光施設「秋田犬の里」の芝生広場に設置する予定だ。

 秋田犬の里は昨年オープンし、秋田犬と触れ合える施設として人気が高まっているが、移設される青ガエルもまた人気の車両だ。単なる休憩場所にとどまらず、ハチ公を絡めた大館と渋谷の交流のストーリーをアピールするなどして、新たな観光スポットに仕立てることができるのではないか。

 大館駅の新駅ビル構想もあり、駅前地区は姿を変えつつある。青ガエルを誘客の目玉に加え、観光客が複数のスポットを回遊して楽しめるようにすることで、駅前一帯の魅力アップに最大限生かしたい。

 一方で、渋谷に先頃オープンした新複合施設には3次元映像「デジタル・ハチ公」が存在感を放つ新スポットが誕生した。ハチ公はもちろん、古里の大館の映像も流されている。渋谷側も、ハチ公のアピールに大館は欠かせないということだ。

 地方と首都圏など大都市部の自治体間の交流は少なくないが、時間がたつにつれて活動が停滞する例もある。その中で、大館市と渋谷区の交流は活発に続いている。ハチ公という共通の大きな核があり、観光面のPRなどでお互いに良好な協力関係が形成されてきたからだ。

 そこからさまざまな面に交流が発展している。両市区は01年に災害時相互応援協定を締結したほか、02年からは大館産のコメが区内の学校給食に使われている。大館側としても、ハチ公がつなぐ渋谷との絆をさらに強め、首都圏での知名度アップにつなげていきたい。