北斗星(2月29日付)

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 秋田市出身の声楽家・田口昌範さん(38)が子どもたちに発声のこつを伝えた。「世界で一番いい匂いの花を持っているとします。匂いをかぐように息を吸ってください。目がパッと開くよね。その状態で歌ってみてください」

▼同市の明徳小学校全校児童を前に、先日行われた音楽教室での一こまだ。発声の9割はブレス(息継ぎ)で決まるのだという。それを分かりやすくイメージさせるための具体的なアドバイスだった。児童の歌声はその後、明らかに張りが出た印象だ

▼田口さんはテノール歌手として、東京を拠点に第一線で活躍する。声楽家はのどが命だ。酒は飲まず、公演前は誰とも話さない。ストレスは計り知れない。だが、それ以上に歌い終えた後の達成感は大きく、客席の拍手は何物にも代え難いという。「歌に救われた」と感謝された時のことは、いまでも忘れられないと語る

▼公演活動の傍ら、学生たちに声楽を指導している。さらに多忙な合間を縫って毎月のように帰郷し、幅広い世代を対象に声楽教室を開いている。本県の合唱の裾野を広げるのが狙いだ

▼2014年に本県で開かれた国民文化祭で国歌独唱の大役を務めたことで、郷土愛が芽生えた。それまでは自らの歌を極めることを最優先にしていたが、身に付けた発声の技術を古里のために役立てなければと強く思うようになった

▼歌には人の心を豊かにし、時には元気づける力がある。田口さんのまいた種が、大きく花開くことを願う。

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