社説:クマ生息数増加 人身被害の根絶目指せ

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 県は、県内のツキノワグマの推定生息数を4400頭と公表した。この数字は従来の推定より大幅に多い。ここ数年、県内ではクマによる人身被害や人里への出没が相次いでいる。新たな推定に基づき、県はこれまでよりも捕獲に力を入れ、クマの生息数を減らす方針を明らかにした。

 従来は自然保護のため、捕獲数を抑制して生息数を維持するのが県の姿勢だった。捕獲強化は方針転換と言える。人身被害の根絶を目指す上では、やむを得ない選択である。ただ、生息数が減り過ぎないよう、捕獲と保護のバランスに十分に配慮し、適切に生息数を管理することが求められる。

 ツキノワグマは日本固有種である。人に危害を加え、農作物の食害などが問題になる猛獣だが、国際的には希少な哺乳類であり、保護の視点が必要だ。

 県はクマの絶滅を避けるため、環境省の指針に従い保護管理計画をつくり、生息数が千頭を下回らないように捕獲数を抑制してきた。長らく、推定生息数を千頭前後とし、おおむね1割を捕獲数の上限としていた。

 現実には上限を超えた年が多かった。それでも人里で目撃されるクマは減らず、実際の生息数は推定よりも多いことをうかがわせた。

 2016年には県内で4人がクマに襲われて亡くなった。これを受け16年度は推定生息数1015頭に対し476頭、17年度は1429頭に対し834頭が捕獲された。有害駆除などで上限を大きく超えたが、クマの出没は続いた。

 県は17~19年度、クマの生息数をより正確に把握するため、足跡やふんを調べる従来の手法と併せ、推定生息域に自動カメラを設置して調査を実施。その結果、県の推定を大きく上回るクマが生息していることが裏付けられた。県が方針転換に踏み切る根拠となるデータを手にした意義は大きい。

 ただ、調査で明らかになった生息数は2800~6千頭。4400頭は幅を持って算出された推定値の中間を取った数にすぎない。今後もより正確に生息数を把握していくべきだ。

 従来、本県の捕獲の大半は有害駆除だった。県は今後、狩猟による捕獲を強化する。高齢化で猟友会員の減少が進むが、担い手確保に努めてほしい。

 人里に現れたクマを有害駆除しても、山中に生息するクマが人を恐れるようになるわけではない。狩猟ではクマが追い回されたり、銃声で脅かされたりする。クマが人を恐れて里に近づかなくなる効果も期待される。

 山間地の過疎化と生活様式の変化に伴い、里山に人の手が入らなくなったこともあり、クマが人里近くで生息しやすくなったと言われる。クマを保護管理する上では捕獲に頼るだけではなく、里山の手入れに取り組むなどして人とクマのすみ分け、共生を図ることも欠かせない。

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