社説:新型肺炎特措法 徹底した議論が不可欠

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 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案が12日に衆院本会議で可決される見通しとなった。改正法が施行されれば、政府は緊急事態を宣言し、都道府県知事が外出自粛などを要請できるようになる。だが運用次第では市民の権利が大きく制限される恐れがある。それだけに、国会での徹底した議論が不可欠である。

 改正案は新型インフルエンザと再興型インフルエンザ、新感染症を対象に規制する現行法に「新型コロナウイルス感染症」を追加する。野党は現行法で対応できるとの姿勢だが、政府は「原因となる病原体が特定されていることなどから、適用させることは困難」として法改正にこだわった。適用期間は施行日から2年以内とする。

 政府は政府専門家会議の「ここ1~2週間が瀬戸際」との指摘を受けて、イベントの自粛や小中高校の一斉休校を要請した。しかし法的な裏付けはなく、明確な根拠が示されていないなどの批判を浴びた。

 そのため法改正により法的根拠を持つことで、自治体や事業者からのスムーズな協力と世論の理解を得る狙いがある。「場当たり的」とする政権への批判をかわそうとの思いも透ける。

 特措法の目玉は「緊急事態宣言」である。重大な健康被害の恐れがある感染症が発生し、全国的に急速なまん延が懸念される場合に出される。

 政府が宣言すれば、都道府県知事は外出自粛のほかにも、学校や社会福祉施設、文化、スポーツ施設の使用制限も要請が可能となる。正当な理由なく要請に応じない場合、知事は「指示」ができる。土地や建物を強制使用する規定もある。強い拘束力で市民の権利が制限され、国民生活に多大な影響を及ぼす可能性は否定できない。

 野党5党との党首会談で、安倍晋三首相は「緊急事態宣言を適用する際は事前に相談する。私権制限の対象は明確にする」と強調した上で、「(制限に)謙抑的であるのは当然。権利とのバランスをどうするか適切に判断していきたい」と説明した。国会ではこの点についてしっかり議論していくことが重要である。

 国内の感染者数は千人を超えた。感染拡大防止のためには、効果的な対策を繰り出す必要がある。だからといって改正法による緊急事態宣言を安易に出すことは避けるべきである。

 日本弁護士連合会は現行法が成立した2012年時点で「人権への過剰な制限がなされる恐れがある」として反対声明を出している。特措法を危惧する声が上がっていることを重く受け止めたい。

 行き過ぎた対応は社会を大きな不安に陥れる。慎重の上にも慎重な対応こそが必要である。安倍首相は丁寧な説明と的確な情報提供に尽くすことが求められる。

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