社説:習主席来日延期 焦らずに関係改善図れ

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 日中両政府は4月に予定していた習近平・中国国家主席の国賓来日の延期を決定した。新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大に伴い、双方がその対策を優先すべきだと判断した。

 習氏の来日準備を予定通り進めた結果、新型肺炎対策がおろそかになっては取り返しがつかない。2008年の胡錦濤氏以来、約12年ぶりとなる中国国家主席の国賓来日だったが、延期はやむを得ない選択と言える。それぞれ国内での対策に全力を挙げるとともに、互いに協力し合って早期の終息を図ることが必要だ。

 ただ、習氏の来日延期発表の直後に安倍晋三首相が打ち出した中国、韓国からの入国者を対象にした入国制限措置は、遅きに失した印象である。指定された場所で2週間待機してもらうなどの内容だが、与野党内からは水際対策の強化を求める声が、かねて続出していた。習氏に配慮してなかなか打ち出せなかったのだろうが、批判は免れない。

 延期となった来日時期については、東京五輪・パラリンピック後の秋以降に行う方向で再調整するという。大切なのは、両国が過去の対立を乗り越え、将来にわたって良好な関係を築いていくことである。習氏の来日に向けて高まっていた関係改善の機運を、しぼませてはならない。

 日中両政府は両国の関係を新たに規定する「第5の政治文書」の作成を進め、習氏の訪日時に発表することにしていたが、新型肺炎の影響によって、取り組みは停滞していた。双方が納得できる文書にしなければならず、そのためには事前に十分に協議を重ねる必要がある。延期になったことを前向きに捉えてじっくり協議し、納得できる内容にしてもらいたい。

 これまでの政治文書には、1972年の共同声明、78年の平和友好条約、98年の共同宣言、2008年の共同声明がある。このうち08年の共同声明は、東シナ海のガス田開発を巡って対立する中、関係を立て直すため戦略的互恵関係の推進を掲げていた。

 ところが沖縄県・尖閣諸島の領有権を巡って両国の対立は深まった。その後、徐々に関係修復が図られてきたものの、依然として尖閣周辺に中国の公船侵入が相次ぐなど、火種は消えていないのが現状だ。

 だからこそ、第5の政治文書がどんな内容になるのかが重要だ。米国に次ぐ経済大国となり、軍事面も含め影響力を強める中国に対し、日本など周辺諸国の警戒感は根強い。東アジアの平和と安定のためには、両国が無用な対立を避けることが不可欠である。

 新型肺炎は、日中両国が経済などで密接な関係であることをあらためて浮き彫りにした。対立ではなく、いかに協力し合うかが問われている。

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