遠い風近い風[小嵐九八郎]味の移り変わり

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 故郷の能代の親戚から、鰰(はたはた)の飯鮨(いいずし)が送られてきて、むろん当方は生のまま食べ、家族は少し焙(あぶ)って食べた。うんまいっ。

 それで思うが、味というのは一人の人生にとって、かなり移り変わりがあることだ。鰰のそれがひどくおいしいと気付いたのは三十半ばであった。さっぱりした魚の肉が微妙に熟し、冬の海で泳いだことはないが、その波に遊ぶ舌触りなのだ。ええっ、こんな凄(すご)い味に気付かなかったのか、思えば父も母も知っていたわけで、やっと親孝行をしたような気持ちになった。

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