北斗星(3月12日付)

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 9年前の3月12日、津波で全電源を失った東京電力福島第1原発の1号機で、水素爆発が起きた。事前に格納容器の蒸気を放出して圧力を下げる「ベント」が実行されたが、ひとたび暴走を始めた原子炉は制御不能に。2日後には3号機でも爆発した

▼原発事故を描いた映画「Fukushima50(フクシマフィフティ)」が6日に封切りされた。東日本大震災のあった3・11から5日間の緊迫と衝撃を生々しく再現している

▼想定を上回る津波、炉心溶融、放射性物質の漏出…。メガホンを取った秋田市出身の映像作家・若松節朗さん(70)は「絶望に次ぐ絶望のドラマを描いた」と振り返る

▼事故で東日本は壊滅の危機にさらされた。その恐怖も歳月とともに薄らいでいる。だが原発周辺の住民は今なお古里に戻れず避難生活を送り、先の見通せない不安を抱えたままだ。たまり続ける汚染水の問題や風評被害にも直面している

▼東京五輪の国内聖火リレーが福島県を皮切りに26日、始まる。共同通信が岩手、宮城、福島で行ったアンケートでは被災者の85%が「五輪が復興の役に立つとは期待していない」と答えた。「復興五輪」の掛け声に多くの被災者が違和感を覚えているということだろう

▼「いま一度、原発とは何か、なぜ五輪を招致したのかを考えてほしい」と若松さん。華々しさや高揚感をつなぐだけでなく、出発地点の福島に思いを巡らす。聖火リレーでは、そんな意識を国の隅々まで行き渡らせたい。

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