社説:新型コロナ特措法 慎重な運用が不可欠だ

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 新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に備える新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案が自民、公明両党や立憲民主、国民民主、日本維新の会、社民各党などの賛成多数で衆院に続いて参院でも可決され、成立した。政府は期間を政令で1年間と定める見通しだ。

 改正法は、首相が新型コロナ対策として緊急事態宣言を発令することを可能にするものだ。これに基づき都道府県知事は、外出の自粛や休校などの措置を要請し、従わない場合は指示もできる。興行施設の利用制限や土地・建物の強制使用などについても要請・指示が可能だ。国民の大幅な私権制限につながることだけに、慎重な上にも慎重な運用が不可欠だ。

 発令の要件が「国民の生命、健康に著しく重大な被害を与える恐れ」や「全国的かつ急速なまん延で国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす恐れ」と極めてあいまいになっているのも気掛かりだ。もっと基準を明確化すべきである。

 安倍晋三首相はこれまで、感染拡大防止のため全国的なスポーツ大会や文化イベントの開催自粛、小中学校や高校の休校措置などを要請してきた。だが場当たり的であるとの批判や、法的根拠がないなどの指摘が相次いだため、特措法の対象に新型コロナを新たに加える今回の法改正に踏み切った。

 特措法は2009年に新型インフルエンザが流行した際、対応が混乱したことを踏まえて13年に施行された。ただ、これまで緊急事態宣言が発令された例はない。実際に法に基づき要請や指示が出された場合、国民生活にどれだけ甚大な影響が出るかは見通せない。

 国会の役割は重大だ。与野党は付帯決議に、緊急事態宣言を発令する場合は原則として国会へ事前報告するとの項目を盛り込んだ。野党は事前承認を求めたものの、与党が応じず、互いに折り合いを付けた形だ。

 だが、自由と人権が幅広く制限されることへの懸念は大きい。多くの国民の理解が得られないまま強行するような事態は避けなければならない。政府が判断を誤った場合は、取り返しがつかない。与野党は緊急事態宣言の前に、審議を尽くす必要がある。

 付帯決議にはほかに、施設の利用制限を要請する際は経済的不利益を受ける者に十分配慮をすることなども盛り込まれた。イベントの自粛などを余儀なくされ、大打撃を受けている中小業者は少なくない。感染終息の気配がなく、先行きが見通せない中だけに深刻である。政府は責任を持って経済支援に全力を挙げるべきだ。

 新型コロナは当初の見込みよりも感染力が強く、政府の対応が後手後手に回った印象は否めない。専門家の意見を踏まえ、感染拡大防止に向けた対策を迅速かつ的確に打つことが求められる。