北斗星(3月20日付)

お気に入りに登録

 警察庁のキャリア官僚だった故松橋忠光氏には「わが罪はつねにわが前にあり」と題した著作がある。警察内部の裏金作りや事件隠ぺいなど、自ら関わった数々の不正を明らかにした。旧約聖書の一節から取った題名には、自分が犯した罪に向き合い、悔い改める気持ちを込めた

▼刊行された1984年当時、反響を呼んだ。野党は松橋氏を参考人として国会に呼ぶべきだと主張。その後も国会で警察の不正が追及される際、著作は度々取り上げられた

▼松橋氏は52年から2年間、秋田県警ナンバー2の警務部長だった。著作では県警の不正に触れる一方、「同僚と部下に質実剛健で有能な人材が多かった」と書いた。その県警で先日、新たな不正が発覚した。車検切れの車を運転した職員を不問にしようとした犯人隠避の疑いで警察官ら4人が書類送検された

▼車検切れに気付いた後は運転していないと口裏を合わせたという。刑罰法令の執行者として法を熟知する者が法の網をすり抜けようとした。事実なら極めて悪質だ。2年半前に同じ容疑で能代署の4人が送検されたのに、再発を防げなかった

▼身内をかばったのだろうが、献身的に仕事に打ち込む大多数の同僚に迷惑がかかるとは考えなかったらしい。何より重大なのは、県民の信頼を損なったことだ

▼松橋氏の著作は県警では忘れられた1冊なのかもしれない。これを契機に、全警察官、職員は題名だけでも覚えてはどうか。再発防止への戒めになるだろう。

秋田の最新ニュース