社説:東京五輪の行方 開催可否の期限を示せ

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 今夏の東京五輪・パラリンピックの開催が揺らいでいる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、延期や中止の可能性が取り沙汰されている。

 国際オリンピック委員会(IOC)は7月24日に開幕する当初の日程通りに行うことを強調している。だがバッハ会長は「世界保健機関(WHO)の助言に従う」としているほか、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューには「もちろん違うシナリオは検討している」と答えた。感染拡大の状況によって、どうなるかは見通せないのが現実である。

 これでは選手たちは不安で仕方がない。大会に向けた準備もままならないだろう。混乱が広がらないよう、IOCは開催可否を判断する期限を示すべきではないか。

 世界中で各競技の五輪予選が相次いで中止や延期となるなど既に大きな影響が出ている。約1万1千人の出場枠のうち4割以上が確定しておらず、各国際競技連盟は予選方式の見直しに追われている。感染は欧米で急速に広がり、南米やアフリカにも波及。多くの選手が外出や渡航の制限により練習環境が悪化している。さまざまな状況を考慮した判断が求められている。

 IOCが予定通りの開催を強調していることに対し、各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)などから異論が出始めた。一部の選手やIOC委員は「私たちの健康を脅かしていいのか」「無神経で無責任」などと批判。日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事も「延期しないで開催するという根拠が見つからない。『五輪をやれる』とは言えない状況」との立場を示した。感染の終息が見えない事態に、ぴりぴりしたムードが広がっている。

 安倍晋三首相は先進7カ国(G7)首脳のテレビ電話会議で、東京五輪・パラの開催について「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして『完全な形』で開催を目指したい」と発言し、賛同を得た。

 予定通りの日程、規模で開催できるに越したことはない。だが先行き不透明なのも事実だ。安倍首相の発言は「感染が終息してから万全な状態で五輪を開催したい」ということを意味し、大会の延期を想定している。そんな見方が広がっている。

 仮に中止となれば、日本経済への影響は計り知れない。SMBC日興証券は、約7兆8千億円の経済損失が発生すると試算している。実施するにしても無観客であれば、インバウンド(訪日外国人客)の落ち込みも含め、大きなダメージを受ける。中止や無観客開催は何としても避けたいだろう。

 選手だけでなく、聖火ランナーやボランティアなど、大会に関わる全ての人が、先の見えない不安と闘っている。そのことにも思いをはせながら、より多くの人に納得してもらえる選択をしてほしい。

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