社説:コロナ対策本部 緊急事態宣言は慎重に

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 政府は新型コロナウイルス特措法に基づく対策本部を設置した。東京都で感染者が急増するなど予断を許さない状況が続く中、初会合で安倍晋三首相は強い危機感を示した。

 これにより緊急事態宣言が可能になったが、政府が慎重な姿勢を示しているのは当然だ。宣言は国民の私権制限を強め、経済停滞の一層の深刻化を招く恐れがあるからだ。宣言発令については、市民生活や経済活動とのバランスにも十分配慮して判断することが求められる。

 新型コロナウイルス流行の中心地は欧米に移っており、国内でも欧米からの帰国者の感染が増加している。同時に経路不明の感染者が少なくないのが大きな懸念材料となっている。国は都道府県との連携を深めて医療体制の充実を図るなどして、感染拡大防止に努めるべきだ。

 特に感染者の増加が際立つ東京都はオーバーシュート(爆発的患者急増)が起きる恐れがあるとして今週末、不要不急の外出自粛を都民に要請した。都市封鎖というかつてない事態が現実味を帯び、新型コロナの感染状況は新たな局面を迎えたと言える。

 対策本部設置を前に、政府の専門家会議も「まん延の恐れが高い」と報告した。今後、緊急事態宣言を検討することになった場合、専門家の科学的な知見にしっかり耳を傾けた上で、冷静に状況を判断し、適切な政策を打ち出すことが重要になる。

 安倍首相は先月、感染拡大防止を目的に3月からの文化・スポーツイベントの自粛や小中高校などの一斉休校を要請した。これにより国民の危機感が高まり、自粛の動きが広がるのに一定の効果はあった。

 一方で経済活動が大きく停滞した。3月の月例経済報告は「厳しい状況」として、6年9カ月ぶりに「回復」の文言が消えた。緊急事態宣言は一層の自粛を招き、経済へのダメージを深刻化させる副作用もあることに留意すべきだ。

 イベントの自粛要請や一斉休校は、政府の基本方針決定後に安倍首相が決断した。だが独断専行の色合いが濃く、混乱も招いた。菅義偉官房長官は、現時点では宣言を行うような状況にはないとしている。混乱を繰り返してはならない。

 安倍首相が緊急事態宣言を出した場合、都道府県知事は住民に外出自粛や学校、映画館などの施設の利用制限を要請できるほか、土地を強制使用する権限なども持つ。個人や企業などの権利への配慮が欠かせない。

 感染の状況や医療体制などは地域によって異なる。政府は地域の事情を十分に把握してきめ細かく対応してほしい。

 宣言を視野に入れた準備を整える必要はあるが、それと同時に重症患者を受け入れる病床や医療機器の拡充などを進めなくてはならない。緊急事態宣言を出さずに危機的状況を乗り切ることこそ望みたい。

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