ピンクモジャ:私たちバスケファンはあきらめない

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ピンクモジャのアウェー・ブースター通信(34)

 2020年3月27日、金曜日の午後1時過ぎ、Bリーグ2019―2020年シーズンは突如終わった。顧客とSkypeで打ち合わせをしていたとき、ポケットのスマホがブルブル震えていた。後で分かったことだが、沖縄に住むキングスブースターの友人が、泣きながら電話をかけてきたのだった。その電話に出ることはできなかった。

 予想はしていたけれどあまりにもあっけない幕切れ。この虚脱感は、どこかで味わったことがある。そうだ、2017年5月、残留プレーオフの1回戦、残り数秒で逆転スリーポイントを沈められ降格が決まったあの瞬間だ。あの時も力が一気に抜け、立ち上がることすら難しかった。今日は、日本全国のBリーグ仲間が、同じような思いを抱いているだろう。それにしてもBリーグがシーズン半ばで中止してしまうなんて。いつから、どこから、歯車が狂い始めたんだろう。

店頭から消えたマスク

 1月29日。夫の花粉症対策のためにドラッグストアへ行ったらマスクが全然売られていない。最近報道されている新型コロナウイルスとやらの影響のようだ。秋田の母に頼んで少し送ってもらい一安心。春になれば、また手に入るだろう。でもマスクは蒸れるから好きじゃない。モジャ帽も蒸れるけど。

 2月8日。楽しみにしていた大阪エヴェッサとのアウェー戦。繁華街・梅田を歩くけれど、心なしかインバウンド客が減っている気がする。ハピ仲間は朝食ビュッフェ付きの宿泊プランにしたのに、人混みが怖くて食堂へ行かなかったそうだ。もったいない。

アウェー大阪戦でアシストを決める大浦

 2月12日。横浜ビー・コルセアーズとの平日ゲーム。半分以上の観客がマスクを着用している。最近、「濃厚接触」という言葉がちらほらと聞こえてくるようになったけれど、今私たちが目の前で見ている競技は濃厚接触そのものなのでは、とぼんやり考える。ゲームは最終クオーターに秋田が爆発して勝利。会場の横浜国際プールは小高い丘の上にある。そこから眺める夜景はきらびやかで、流行病への恐怖が消えていくようだった。

 2月25日。開幕したばかりのJリーグが新型コロナ感染防止のために延期と発表。屋外競技でさえ無理なのか。胸がざわつき始める。

 2月26日。Bリーグも2月28日から3月11日まで試合延期と発表される。2月末の豊橋行き(三遠ネオフェニックス戦)をキャンセル。豊橋カレーうどん食べたかったな…。

 3月4日。先週から始めた時差出勤にも慣れてきた。仕事で錦糸町に向かう途中、墨田区総合体育館の前を通る。本当は今夜もサンロッカーズ渋谷戦でここに来るはずだった。

 3月6日。秋田へ帰省ついでに秋田駅前のノーザンゲートスクエアで選手の練習をチラ見。みな元気にシューティングしていて安心。久しぶりにハピネッツ成分を補充できたがスケスケすぎて気になる。ゴーヤかツタのカーテンでも生やした方がいいのでは。

誰もいない客席に手を振るKCに涙

 3月11日。無観客試合でのリーグ再開が決定。さびしいけれど致し方なし。

 3月14日。外出先で無観客試合の動画を観戦(対サンロッカーズ渋谷戦)。バッシュのキュッキュッという音だけが響き渡る。相手のフリースローのとき、誰もいない観客席に手を振ってブーイングをあおるKC(カディーム・コールビー)に涙が出る。

無観客で行われたアウェー渋谷戦

 3月15日。昨日の川崎対北海道に続き、今日の千葉対宇都宮の試合も突然中止になってしまった。リーグ再開は時期尚早だったのだろうか。今日がシーズン最後の試合になったのではという予感がし始めた。

 3月19日。バスケットライブが過去の名試合の配信を始めたが、やはりあの残留プレーオフの試合が放送予定に入っている。いいかげん忘れてくれや。

 3月22日。よそのチームで外国人選手が帰国したらしい。気持ちは分かる。誰も責められない。

 3月24日。韓国のプロバスケリーグが早期終了決定。もう何が起きても驚かない。

バスケを楽しむ日々は遠い昔のよう

 3月27日。Bリーグの残りの全試合の中止が決定。B1からの降格はなし。ハピネッツの最終順位は19勝22敗で東地区5位。B1として戦ったシーズンでもっとも良い成績だっただけに、残り19試合を残して終了しなければならないことが本当に残念だ。残り全勝していればチャンピオンシップもワンチャンあったかもしれない、とうそぶいてみるもむなしい。

Bリーグ中止が決まり、記者会見するハピネッツ水野社長

 4月2日。とうとうBリーガーにもコロナ陽性反応が出たとの報道。いつかこの日が来ると思っていた。

 そして本日4月5日。私が住む東京では、1日あたりの数としては過去最多となる143人の感染が確認された。緊急事態宣言が出るのももう間もなくかもしれない。バスケを見るどころか、秋田へ帰ることもままならなくなってしまった。横浜の田渡キャプテン出演のテラスハウスを見てキャッキャウフフしたり、三河戦のこたつ席でどんぶくを羽織りながらミカンをむいていたのが遠い昔のように感じられる。

 夕食時、ニュースを見ていても気が滅入るので、バスケットライブで公開している2018年5月の昇格プレーオフ対熊本戦の2戦目をテレビにうつしてみた。今よりちょっと幼いタクちゃん、この試合でスリーポイントを6本決め、今は広島で頑張る谷口、変わらず縁の下の力持ちな白濱。そしてチームと一体となって揺れるピンクの壁。「三密」どころか「三千密」ぐらいに感じる。一つ一つのプレーをこの目で見ているはずなのに、いちいち声が出てしまう自分に夫が「この試合見たことあったんじゃないの!?」と驚いていた。B1昇格を決めた瞬間、コートにひざまずいて目を潤ませる田口の姿に、私も涙せずにいられなかった。

我慢のクオーター、乗り越えよう

 Bリーグがなくなって思うこと。それは、毎年この季節にバスケ観戦に打ち込んでいたことが、どれだけ幸せなことだったかということだ。知らない街を訪れ、再会したハピネッツブースターと抱き合い、アリーナグルメを頬張り、祝勝会(残念会)で酒を酌み交わす。どれも日常の些細な一コマのようでいて、実はかけがえのない一瞬だったのだ。だからBリーグが再開したら私はまず、感謝を捧げたい。選手はもちろん、スタッフやボランティア、リーグの皆さん、そして放送や新聞などメディアの皆さん。私たちが当たり前のように享受していたことは、多くの人に支えられて初めて成り立つのだ。

 新型コロナウイルスとの戦いは、予想以上に長く続くかもしれない。けれど私たちバスケファンは、あきらめない。どうか、鉄壁のディフェンスで我慢のクオーターを乗り越えましょう。今シーズンの失われた3か月分を取り戻すために、その3か月分、長生きしましょう。アリーナで再会し、皆さんとハグできる日を心から待っています。

 東京より、ピンクモジャ。

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