社説:文化イベント自粛 再開見据え支援充実を

お気に入りに登録

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、国内の演奏会や演劇、映画、展覧会といった文化イベントの中止や延期が相次いでいる。多くの人が集まることによる感染リスクを回避するためだ。とはいえ「文化の灯」を消してはならない。本格的な活動再開を見据えた支援策を政府はいまから充実すべきだ。

 県内では、わらび座(仙北市)の3月の全国公演が全て中止となり、運営するあきた芸術村では宿泊キャンセルが相次いだ。「70年近い歴史で最大の危機」として支援金を募った結果、1カ月で全国から約2500件、総額約7千万円の寄付が集まった。だが公演再開のめどは立たず、厳しい運営が続く。

 影響は民謡界にも及ぶ。本県には12の民謡全国大会があり、全国最多。このうち「秋田港の唄」「秋田おばこ節」「秋田草刈唄」「秋田追分」「本荘追分」の5大会が中止となった(18日現在)。高齢化により出場者が減る中、いったんでも中止となると再開が困難になる可能性もある。それだけに協賛企業や団体の理解と協力が欠かせない。

 ライブハウスも苦境に陥っている。秋田市内の経営者は密閉・密集・密接の「3密」を避けるのは困難と判断し、4月の公演を全て中止。5月以降の見通しは不透明という。経営は入場料に支えられており、事態は急を要する。ミュージシャンの活動の場が失われることがないように、迅速な支援が必要だ。

 政府の緊急経済対策では、収入が半減した中小企業に最大200万円、個人事業主には最大100万円を給付する方針。ただ申請手続きや給付時期など分かりにくい点が多い。政府は積極的な情報発信を通じ、困窮している関係者の手元に一日でも早く必要な資金が届くようにしなければならない。

 国内主要21団体で構成する文化芸術推進フォーラム(東京)によると、感染拡大の影響で中止・延期となったコンサートや演劇などの公演は全国で5678件。チケット払い戻しなどの損失額は3月中旬までで推計522億円にも上る。その後も公演自粛の動きは広がっており、損失額は膨らむ見通しだ。

 政府は払い戻しによる主催者の経営悪化を防ぐため、チケット購入者が払い戻しを求めない場合は寄付とみなし、税負担を軽減する支援策を講じた。だが、それだけでは十分ではない。ドイツや英国などでは芸術文化に特化した手厚い対策が進められている。政府も、より大胆な支援に取り組むべきだろう。

 社会が不安なとき、人々に生きるエネルギーを届け、生活に潤いを与えるのが芸術であり、文化だ。厳しい状況下、インターネットなどでメッセージを発信するアーティストの存在は心強い。政府は芸術・文化の持つ意義を尊重し、活動の維持を支えてほしい。さらに感染終息後は、本格的に再開するために十分な支援策を講じるべきだ。

秋田の最新ニュース