ローカルメディア列島リレー(4)富田光浩

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 全国のローカルメディアの作り手が、ローカルならではのメディアの形や取り組みについて綴るリレーエッセイです。紙もウェブも、看板やアートプロジェクトだって「ローカルメディア」に?! 特色あるローカルメディアの担い手たちのアイデアと奮闘の記録です。

「飛驒」の始まりは一脚の杉の椅子

 小冊子「飛驒」は飛驒高山の家具メーカー飛驒産業の広報誌です。その始まりには偶然のきっかけがありました。

 ふと立ち寄ったショールームで一脚の綺麗な椅子に目が止まり、座ろうと手前に引くととても軽い。店員の方に「軽いですね?」と尋ねると「これは杉の圧縮材で作られているので軽くて丈夫なんです」と。ここで「ん?」と思った。「杉」「圧縮」……これは日本中の山で放置されて問題になっている杉の木を技術で使おうとしているメーカーかもしれないと。その場で購入し調べると確かにその通りで、しかも自分の生まれた岐阜県。ほどなく商品が届き、梱包を開けるとふーっと杉の香りがし「木っていいなぁ」と何とも言えず嬉しくなった。毎日その椅子に座っていたら漠然とこのメーカーの仕事をしたいと思い、広報室に電話をかけていた。「一度工場見学をさせてください」と。10日後には高山を訪れ、密かに企画書も持参、その内容は「家具は一生のうちで何度も買う機会がやって来る。結婚するとダイニングテーブル、子どもができると勉強机というように。だから一度でも買ってくれたお客様と関係をつなげるような小冊子を作りませんか?」と。その考えは気に入られ、その後苦労をしながらも創刊までこぎつけた。以来現在まで23号を数えています。

 飛驒産業は来年創業百周年を迎えます。元々この地方は遠く昔、奈良の都を築いた飛驒の匠を祖先に持ち、その技を現代まで受け継ぐ家具産地です。私もこの飛驒の匠の伝統や文化や想いを冊子という場で次の世代に伝えていけることに喜びを感じて活動しています。

富田光浩/飛騨(岐阜)・東京
アートディレクター。1964年岐阜県生まれ。商品企画からブランディング、パッケージデザイン、エディトリアル、広告などを手がける。主な仕事にモスバーガー、トヨタ自動車、BRIDGESTONE、三菱地所、三井不動産など。

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