社説:フェイク発言 防衛相の姿勢、無責任だ

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 多くのメディアがそろって報じたニュースを、国務大臣が「フェイクニュース」と非難する。尋常なことではない。

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡り今月6日、読売新聞やNHK、共同通信など在京メディアが相次ぎ新たな動きを報じた。政府が秋田市新屋に配備するとした現行案を断念、県内で新たな候補地を検討しているという内容だ。これを河野太郎防衛相が「フェイク」と断じた。

 フェイクニュースは「偽ニュース」などと訳されるが、意味するところは一様ではない。総務省の2019年版「情報通信白書」は「定義は研究者によってさまざまである」とする。

 河野氏は記者会見で、「事実でないことを報道するのはフェイクニュースだ」と述べた。だとすれば、何が事実でなかったかが問題となる。

 各社の報道は、現行案の断念や県内を軸とした新候補地の検討について決定済みの事項として伝えたわけではない。あくまでも検討の方向として報じた。

 「結果的に報道の通りになったらどうするか」との質問に、河野氏は「結果的にそうなっていない」「過去の話だ」などと答え、やりとりがかみ合わない場面もあった。具体的にどこが「事実でない」のかは、明らかでないままだ。

 各社が取材の結果、確信を抱いて報じた内容に対し、何が事実ではないのかを明示せず、一方的に報道への信頼をおとしめる発言を繰り返すのは無責任だ。言論の自由を侵害する恐れすらあると言わざるを得ない。

 各社の6日の報道に、佐竹敬久知事は「政府からの連絡は全くない」「当事者のわれわれに何も情報がないから困る」と不快感をあらわにした。河野氏がフェイク発言を始めたのはそれ以降。「知事はフェイクニュースへの不信感を発言したと理解している」とも述べている。

 先の情報通信白書は、フェイクニュースについて「マスメディアの報道を批判する際に言及されるケースもある」とも指摘する。知事の批判をかわすのを狙ったようにも見える今回の発言は、その一例ではないのか。

 思い起こしたいのは、そもそも配備計画が浮上した際の経緯だ。2017年11月に秋田、山口両県への配備計画があると報道されて以降、政府は半年間、配備候補地と認めなかった。だが、結果は報道の通りだった。

 河野氏の発言後、インターネット上では「これ、フェイクなんですか」といった反応が散見される。ツイッターのフォロワー数が160万を超え、政界屈指の発信力を持つ河野氏ならではの現象だ。その発言は、配備計画に強い関心を持つ多くの県民を混乱させていることを忘れてはならない。

 配備計画の行方は遠からず明らかになる。その時、河野氏は自身の発言をどう振り返ることになるのだろうか。

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