北斗星(5月28日付)

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 新型コロナウイルスの影響でイベントの中止や延期が相次ぐ。県内短歌界最大の催しである全県短歌大会も参加者が会場に集まるのを避け、初めて新聞紙上での開催となった

▼1937(昭和12)年に始まり、今年は第81回。中止になったのは戦時中の44、45年の2回だけだ。寄せられた257首のうち20首以上がコロナを詠んでいた。「観客の表情しぐさどよめきも主役だったと気づく春場所」という歌が切なかった

▼沖縄県在住の歌人、松村由利子さんに恒例の講演の代わりに寄稿してもらった。主に科学を専門とした新聞記者出身らしく「センス・オブ・ワンダー」に触れた。米国の生物学者、レイチェル・カーソンの言葉だ

▼自然の不思議さや美しさに感動する心、感覚を意味する。科学者だけでなく、歌人にとっても大事な資質という。「ふかぶかとクロッカスの花に見入りたりまこと『細部に神は宿る』」(小池光)などの作例を示して、日常生活の中で自然の不思議さを見つけるよう勧めていた

▼その言葉を読んで思い当たったことがある。わが家で3年前からコーヒーの苗の鉢植えを育てている。なかなか大きくならなかったが、昨年から急に伸び始めて高さ20センチほどになった

▼植え替えようと鉢から取り出したところ、根っこが密生。窮屈だったろうと思った。一回り大きな鉢に移してからは艶やかな葉を広げ、日々の成長に目を見張らされる。遠くへ出掛けなくても感動の機会は身近なところにある。