社説:コロナと人口過密 一極集中是正の契機に

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 多くの人が暮らし、多様な企業が集積する大都市は経済や文化の拠点である一方、ひとたびウイルス感染者が出た場合は感染を一気に拡大させる中心地にもなってしまう。新型コロナウイルスはそのリスクを知らしめた。

 国内の感染者数は東京都が最多で5千人を上回る。埼玉、千葉、神奈川を合わせた首都圏4都県では8千人超となり、国内のほぼ半数を占めている。クラスター(感染者集団)は地方でも発生したものの、これまでの発生状況を見ると東京や大阪など大都市で特に顕著だった。

 こうしたことから言えるのは、過度な人口集中を抑えて分散させるのが肝要ということではないのか。コロナ禍を教訓として、東京一極集中の是正に本格的に取り組みたい。

 東京一極集中はかねて大きな課題となっており、一向に改善されないのが実情だ。総務省が今年1月に公表した2019年の人口移動報告によると、首都圏4都県は転入者が転出者を15万人近く上回る「転入超過」だった。増加幅も3年連続で拡大し、一極集中の加速ぶりが浮き彫りになった。

 安倍政権は14年に地方創生を看板政策に掲げ、一極集中の是正に取り組んだ。だが、鳴り物入りで始めた省庁の地方移転は文化庁の京都移転以外に目立った動きはなく、掛け声倒れに終わった印象だ。

 ただ、都市部から地方への移住は本県など各地で進められており、都市部に住みながら地方と交流する人たちを指す「関係人口」の拡大にも期待がかかる。諦めず地方創生に力を尽くさなければならない。

 首都圏では通勤時の満員電車がコロナ感染拡大につながりかねないとして、混み合う時間帯を避ける時差出勤や、自宅にいながら業務を行うテレワークの導入が大企業を中心に進められた。ぎゅうぎゅう詰めの電車に揺られて出勤することが、いかに大きなリスクとストレスを伴っていたか再認識させられた人も多かったのではないか。

 感染のペースが落ちているとはいえ、油断はできない。第2波、第3波があるとみて備えるべきだ。各企業は勤務形態を全て元に戻すのではなく、引き続き時差出勤に努め、テレワークを活用するべきだろう。特に育児や介護を抱える従業員にとっては有効な働き方であり、今後を見据えて柔軟に対応することが大切だ。

 テレワークを試みた結果、首都圏にいなくても地方で十分に仕事ができることが分かったとして、拠点を地方にシフトする企業が増えていく展開もあり得る。国や自治体はそうした動きを積極的に後押しするべきだ。

 何よりも重要なのは大都市と地方の均衡ある発展だ。東京などの人口過密ぶりを抑制して地方の衰退を食い止める。そのためには何が必要なのか。いま一度、知恵を結集したい。