北斗星(6月9日付)

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 絵と映画が大好きな少年は中学時代、日本画の指導を受けた。描く対象を考えながら引けば、線だけでも質感を表現できることを学んだという。少年は後のさいとう・たかをさん。劇画「ゴルゴ13」の作者だ。下書きもせずに迷いなくペンを走らせる姿をテレビで見たことがある

▼漫画誌「ビッグコミック」(小学館)で連載のゴルゴ13が先月から休載している。1968年11月の連載開始から一度も休んだことはなかったが、新型コロナウイルス対策でやむを得ない決断だった。10人以上のスタッフが分業で制作する仕事場は3密そのもの。安全を保つのは難しかった

▼さいとうさんは「紙の上で映画を作る」という志から分業制を採用。リアルな絵柄でストーリーを紡いできた。脚本を読み込み、構成と構図にこだわる作品は多くの読者に支持された

▼しかし最近の漫画界はこうしたアナログ作画に対し、パソコンを使ったデジタル作画が主流になりつつある。初期投資を除けば費用が軽減され、作業時間が大幅に短縮できる利点もある

▼横手市増田まんが美術館は国内最多、40万点以上の原画を所蔵する。コロナ禍による休館からようやく再開した。同館の大石卓館長(50)は「漫画の原画は時代を映す鏡」と語る

▼修正液や編集者の赤ペンが入った原画もあれば、デジタル技術を駆使した最新の原画も。展示作品を見ていると、アナログ、デジタルを問わず、創作に込められた熱量は変わらないことが伝わってくる。

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