社説:五輪の簡素化検討 開催へあらゆる道探れ

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 新型コロナウイルスの影響で来夏に延期された東京五輪・パラリンピックに関し、政府、東京都、大会組織委員会の3者が運営を簡素化し、感染対策を強化するなど計画を見直す方向で検討を進めることになった。

 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は先月、来年開催できない場合は中止になるとの見通しを示した。世界的な新型コロナ流行の収束がいまだ見通せない中、延期を決めた際に安倍晋三首相が掲げた「完全な形」での開催にこだわるのは、もはや現実的とは言えないだろう。あらゆる可能性を探って、確実に来夏の開催にこぎ着けたい。

 聖火リレーに関しては、組織委が既に日程短縮を検討する方針を示している。各地での祝賀行事の取りやめも検討対象に挙がった。

 今回浮上した大会本番の見直しでは、開閉会式の入場行進の省略や時間短縮、式と競技の無観客開催や観客数の絞り込みなどが検討される。

 選手村に関しては、村外への外出制限などが検討課題に挙げられた。選手、大会関係者、観客に事前のPCR検査などを行う医療態勢を整備する案も出ている。

 国内では先月、緊急事態宣言が全面解除されたが、流行の第2波、第3波が起きる懸念は残っている。ワクチンが開発されるのは来年以降の見通しだ。開催するためには、感染防止対策を徹底して安全を確保しなければならない。

 感染防止と競技実施を両立させる上で、今後開催される他のスポーツの試合や大会の運営がヒントになる可能性がある。プロ野球やサッカーJリーグは無観客で開幕・再開する予定だ。順調に感染が収束すれば、秋には観客を入れた試合が可能になるかもしれない。

 来年6~7月、五輪に先立って広域開催される欧州サッカー選手権は、サポーターたちが国境を越えて移動するかどうか注目される。日程的に厳しいかもしれないが、それらの試合や大会のコロナ対策に学び、安全な運営に全力を挙げてほしい。

 競技会場を無観客にしたり、観客を絞り込んだりするのは大きな困難を伴うと指摘されている。延期に伴い数千億円規模の追加費用が見込まれる中、組織委の収入減に直結するからだ。

 組織委は公式サイトを通じた分だけで五輪448万枚、パラリンピック97万枚のチケットを販売済み。大量の払い戻しとなれば混乱も避けられない。こうした課題を乗り越えるために、多くの知恵を結集しなければならない。

 五輪の価値は競技そのものにある。簡素な運営の在り方を検討することは、五輪の将来像を考える上で意義が大きい。商業化が進み高コストとなった五輪を見つめ直す契機となり得る。建設的な議論がなされることが望まれる。

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