社説:マイナンバー連結 一律給付、迅速化優先を

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 マイナンバーと個人の持つ預金口座を連結する「ひも付け」について、高市早苗総務相は1口座に限定して国への登録を義務化する方針を示した。政府は関連法案を来年の通常国会に提出する考えだ。

 背景には、新型コロナウイルス対策として一律10万円を全国民に配る特別定額給付金事業の遅れがある。総務省の最新集計では、全世帯の約3割にしか給付されていない。

 マイナンバーと1口座をひも付けすれば自治体は口座把握の手間が省け、災害時などに現金給付する場合も迅速化できる。将来に備えて義務化が必要というのが政府の考えのようだ。

 マイナンバー制度は運用から4年半近くが経過した。個人番号カードは普及が進まず、交付率も約16%にすぎない。内閣府調査では取得予定なしが半数を超え、その理由として6割近くが「必要性が感じられない」を挙げている。

 理解が進まない現状を見れば、義務化には慎重な検討が必要だろう。性急な議論で強引に実現すれば、制度そのものへの不信感を増幅しかねない。

 制度上のトラブルや安全対策の不備はこれまで、たびたび発生。自治体でつくる管理法人ではシステム障害が続発、マイナンバーを含む個人情報の誤送信や記載ファイルの紛失なども自治体で起きている。

 それだけに国や自治体が取り組むべきなのは、個人情報の安全管理徹底と一層の制度周知だ。それを十分に行わないままでひも付け義務化への理解を得ようとするのは無理がある。迅速な給付のためというが、本当に必要なのかとの疑問も残る。

 一律給付に当たり兵庫県加古川市は、市民への郵送書類に記載した独自の世帯番号でオンライン受け付けを開始。マイナンバー以外でも、手続きを簡素化して支給している。政府はこうした工夫例を収集、マイナンバーに頼らない方法を検討することも視野に入れるべきだ。

 一律給付では、生活困窮者の存在を忘れてはならない。銀行口座や身分証明書がないという人もいる。最も必要な人の手にいつまでたっても届かないのであれば、事業は本来の役割を果たさない。将来に備えてひも付けの義務化を考えるよりも、目の前の生活困窮者対策にもっと力を入れるべきだ。

 義務化に関しては、個人情報を強制的に把握されることに抵抗を覚える人もいるはずだ。必要な人が任意で口座を登録するだけで十分ではないのか。1口座の登録義務化が将来、個人の全口座への拡大と国による監視強化につながるようなことはないのか。そうした疑念も払拭(ふっしょく)できない。

 政府と自治体が今取り組むべきは一律給付の迅速化を図る改善策だ。将来に備えたひも付けの義務化についてはまず、その利点と問題点をじっくり検討することから始めるべきだ。

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