社説:特産品で学生支援 古里への愛着育みたい

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 親の収入が減って仕送りが滞ったり、アルバイトができなくなったり。新型コロナウイルスの影響で、地元を離れて1人暮らしをする学生らの多くは生活費を確保するのが大変だ。その上、企業に採用を抑制する動きが出ていることもあり、将来への不安が増している。

 そんな中、全国各地の自治体が地元の米や特産品などを学生らに贈る事業を展開している。慣れ親しんだ古里の味に触れることで、少しでも元気をつけてもらいたいとの思いからだ。古里への愛着にもつながるだけに意義は大きい。

 県内でいち早く、この事業に着手したのが潟上市だ。先月上旬に市のサイトで申請受け付けを開始した。対象は県外在住の大学生、短大生、専門学校生、予備校生、高校生ら。

 しょうゆやつくだ煮の詰め合わせ、あきたこまち、比内地鶏焼き肉セットなど、市のふるさと納税返礼品で人気の高い6品の中から1品を選んでもらって贈呈する。

 これまでに東京都や宮城県などに住む180人以上から申請があり、希望の品を順次発送。古里のありがたみを実感したとという感謝のメッセージが次々寄せられている。

 市はコロナ感染が拡大する4月、県境をまたぐ移動自粛要請のため帰省することもできず心細い生活を余儀なくされている県外の学生らに対して、何か支援ができないものかと考えて特産品の贈呈を決定。翌月に市議会の賛同を得て、早速事業を開始した。迅速な対応と言える。

 この事業には、地元の業者に対する支援という目的もある。コロナの影響で経済活動が停滞しているだけに、市が特産品を買い取って贈ることは大きな助けになる。

 美郷町はサイダーや菓子などの特産品セットを用意し、今月から申請受け付けを開始した。湯沢市は稲庭うどんなどの特産品にマスクや除菌スプレーを加えた。県内で同様の事業を実施する自治体はほかにもあり、徐々に増えている。

 共通しているのは地元出身者に対する温かいまなざしだ。若者の県外流出が進行する中、いま一度生まれ育った土地に愛着を持ってもらい、将来的には1人でも2人でも秋田に帰ってきてほしい。そんな切実な願いも込められている。

 全国的に感染のペースは鈍化し、県境をまたぐ移動の自粛要請も緩和されている。それでも人と人が自由に集まり、気兼ねなく交流していた以前の日常には程遠い。長期にわたる自粛生活の影響で孤立感を深め、うつ状態に陥った学生らもいるというから深刻だ。

 古里からの贈り物が、ほんのいっときでも心を和ませ、安心感を与えることにつながればと思う。コロナとの闘いは長期戦の見通しだ。自治体には今後とも、若者への思いやりある支援を望む。