社説:河井夫妻逮捕 首相と自民の責任重い

お気に入りに登録

 昨夏の参院選広島選挙区を巡り、東京地検特捜部は公選法違反の疑いで前法相の衆院議員河井克行容疑者(57)=広島3区=と妻の参院議員案里容疑者(46)を逮捕した。新人の案里容疑者を当選させるため、票の取りまとめなどを依頼して地元県議ら96人に現金計約2570万円を渡した買収容疑である。

 これまでの任意聴取で夫妻は買収を否定しているが、関係者によると96人のうち大半が受け取りを認めている。約2400万円を克行容疑者が、残り170万円は案里容疑者と共謀して配った疑いが持たれている。

 大規模買収の容疑で法相経験者と現職国会議員がそろって逮捕されたこと自体、政治への信頼を大きく揺るがすものだ。カネをばらまいて結果を左右できるのであれば、公正な選挙はそもそも成り立たない。

 捜査する検察は疑惑の徹底解明という重責を担うことになる。「立証のハードルは高い」との専門家の指摘もあり、慎重な証拠固めによる適正な捜査を肝に銘じてもらいたい。

 夫妻は17日に自民党を離党したが、党の責任は消えるはずはない。これまでの流れを振り返ればそれは明らかだ。

 大規模買収事件は昨年10月浮上した案里容疑者陣営の公選法違反疑惑が端緒。車上運動員への報酬が法定上限を超えていた疑いがあり、克行容疑者は法相を約1カ月半で辞任。今年3月には案里容疑者の公設秘書らが逮捕され、今月16日に公設秘書に有罪判決が言い渡された。

 忘れてならないのは、案里容疑者の出馬が首相官邸と党本部の主導だったことだ。党本部は夫妻側に1億5千万円を提供。同じ選挙区に出て落選した自民現職側への提供は1500万円だった。

 金額の開きを見れば、首相官邸と党本部が案里容疑者側に肩入れしていたのは明白だ。当選後は二階俊博幹事長の派閥に所属。首相補佐官経験者の克行容疑者は安倍晋三首相や菅義偉官房長官に近いといわれる。

 1億5千万円について二階幹事長は「買収資金に使うことができないのは当然だ」と述べた。だがこの説明だけでは、金額の多さと大規模買収容疑との因果関係について疑念が残る。

 自民への今年の政党交付金は約172億円で、政党別では8年連続して最多だ。多額の公金配分を受ける党の総裁でもありながら、安倍首相は「法相に任命した者として責任を痛感している」と陳謝、「総裁として一層襟を正し、説明責任も果たしていかなければならない」などと述べるにとどまった。

 案里容疑者の擁立を主導した自民党の総裁として、克行容疑者をかつて法相に任命した者として、安倍首相がどう責任を取るのかが改めて問われる。首相自らの言葉で国民が納得できるように説明を尽くすことができなければ、政治不信をますます増幅させるだけだ。

秋田魁新報電子号外

秋田の最新ニュース