社説:人里へのクマ出没 すみ分けへ地域結束を

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 県内で市街地周辺のクマの出没が相次ぎ、社会問題になっている。県はクマ対策の中長期的指針として「県野生鳥獣管理共生ビジョン」を策定し、「人とクマのすみ分け」という目標を掲げた。

 すみ分けは、人間の生活圏にクマを近づけないようにし、近づいて危害を及ぼすクマは駆除などにより管理する一方、クマが山で暮らす生息地を維持することを指す。ビジョン策定の背景には、人とクマの関係を巡る急激な変化がある。市町村や地域社会が連携し、具体策を積み重ねていく必要がある。

 県内のクマの有害駆除数は1990年代には、年間100頭を超える年は1度しかなかった。それが一転、2010年代になると100頭以下の年が1度だけ。17年度には過去最多の769頭を記録した。

 中山間地の過疎化と生活様式の変化により、かつての里山は人の手の入らないうっそうとした森に変わり、クマの生息域となっていった。そうした中、人とクマが遭遇する機会そのものを減らす根本的な対策は進まず、緊急的な対応策として有害駆除が繰り返されてきた。

 ツキノワグマは種の保存法施行令が指定する国際希少野生動植物種でもある。人間の安全を守りながらも、クマが安定的に存続できる個体数を維持することが求められる。

 駆除と保護という相反する課題にどう向き合うか。その考え方をまとめたのがビジョンだ。クマと人の生活圏の間で草木を伐採して緩衝地帯を設け、クマが人里に近づきにくくする「ゾーニング管理」や、犬がクマにほえかかって奥山に追い返す「ベアドッグ」など、さまざまな手法を例示した。

 小型無人機ドローンによる追い払いなど、最新技術の活用法も検討するという。17年度以降、クマ対策の見直しを進めてきた結果であり、有害駆除だけに頼らない総合的な対策を進める県の姿勢は評価できる。

 ただ、大量出没は人間社会の構造的な変化を背景としているだけに、クマとのすみ分けは決して容易ではない。ビジョンが「(クマと人との)共生実現という目的のためにはあらゆる手法を使う」として、試行錯誤の必要があることを強調していることからもうかがえる。

 すみ分けを実現するため重要な要素として「地域社会の結束」が挙げられた。市町村や警察、猟友会、住民がどこまですみ分けの理念を共有し力を結集できるかが最大の鍵と言える。

 16年にタケノコ採りの男女計4人がクマに襲われて亡くなった鹿角市では、出没場所で花火を使った追い払いを試みるなど地道な対策が続いている。こうした市町村はまだ少数派だ。

 有害駆除だけではクマに人間に対する恐怖心を覚え込ませる効果は低いとされる。地域の実情に応じ多様な対策を工夫し、クマを人里から遠ざけたい。

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