社説:改正著作権法 海賊版撲滅への第一歩

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 漫画などの海賊版サイト対策を強化する改正著作権法が成立した。作者に無断でインターネット掲載された作品と知りながらダウンロードすることは違法であり、悪質な場合は刑事罰を科される。漫画家らの権利はもちろん、出版文化を守っていくためにも社会全体で法律の意義を共有したい。

 著作権法は無断で作品をネット掲載する違法アップロードを厳しく規制。今回の改正はダウンロードについて、規制対象を漫画や小説、論文、写真集など著作物全般に拡大した。ただし、過度な規制はネット利用の萎縮を招くとして例外を定めた。

 数百ページある小説の数ページや数十ページある漫画の数こま、会員制交流サイト(SNS)に投稿された漫画の一シーンなど「軽微なもの」は対象から除く。多くの人がネットで情報を検索したりSNSで発信したりしていることから、配慮は当然だろう。

 改正の背景には近年、海賊版による被害が深刻化している状況がある。2018年に閉鎖した国内最大規模の海賊版サイト「漫画村」による被害額は、推計3千億円以上にも上った。

 国内向けの漫画や写真集などの海賊版サイトは、昨年11月時点で500を超えている。海賊版は出版社の売り上げや作家の収入の減少を招き、創作活動に支障を来す懸念もあるだけに法改正は当然のことだ。

 改正法はネット利用者を海賊版に誘導する「リーチサイト」の運営も規制する。リーチサイトは海賊版を直接掲載していないが、無料での閲覧を促し著作者の利益を実質的に侵害しているとして問題視されていた。

 海賊版へのアクセスが少なくなれば被害の減少も期待される。政府は改正法の趣旨を周知し、違法ダウンロードが許されないことを広く認識してもらうようにしなければならない。利用者は、海賊版ダウンロードが著作権侵害に当たることを自覚すべきだ。

 法改正を受け、日本漫画家協会と出版関連9団体でつくる出版広報センターは「新たな対抗手段を得て海賊版サイトに立ち向かうことができる」との共同声明を出した。対策は緒に就いたばかりとの受け止め方だ。

 課題は依然として残る。例えば、ダウンロードせずにデータを受信しながら読み進めることは規制の対象外だ。サイト接続を強制的に遮断する措置は「通信の秘密」との兼ね合いから導入が難しい。さらに海賊版サイトの多くは、法規制の緩い海外のサーバーを利用していて特定しにくい。それだけに、今後は海外との捜査協力や国際連携を積極的に進める必要がある。

 海賊版による著作権侵害の損失額は甚大であり、漫画家やクリエーターの収益が奪われることは日本のコンテンツ産業の衰退につながる。法改正は海賊版撲滅に向けた一歩にすぎない。出版文化を支えていくため、一層の知恵の結集が求められる。