ローカルメディア列島リレー(10)桜井祐

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 全国のローカルメディアの作り手が、ローカルならではのメディアの形や取り組みについて綴るリレーエッセイです。紙もウェブも、看板やアートプロジェクトだって「ローカルメディア」に?! 特色あるローカルメディアの担い手たちのアイデアと奮闘の記録です。

地域の終活

 縁あって長崎市が実施する「長崎アートプロジェクト」のキュレーターを務めることになった。編集者という仕事柄、今まで多様なメディアを扱ってきたがアートプロジェクトは初めて。しかし「情報伝達の装置」という意味では、なるほどアートプロジェクトもメディアのひとつといえる。

 2019年12月には実施場所の長崎市野母崎地区を視察。夜は地元の人たちと盛大に酒盛りをした。盃を交わし出てくる話といえば「若者が少ない」「一次産業の担い手がいない」など。地元で行われるプロジェクトに希望を託し、それぞれの思いを語ってくれた。

 これら地域の「少子高齢化」にまつわる諸問題に対しては、国の助成金獲得や都市圏からの移住促進といった策がとられるのが一般的だ。その必要性は理解しているが、どこか違和感を覚える自分がいる。少子高齢化はもはや日本の構造的問題であり、マクロの視点で見れば助成金や移住は単なるその場しのぎにしかなりえないからだ。ではアートプロジェクトに何ができるのか――。

 話し合いの末、今年度のテーマを「エイジング(歳や時間を重ねること)」とした。老いを否定的に捉える昨今の風潮に問いを立て、個人や社会が歳を取ることをポジティブに見つめ直すことこそ、今この場所に必要なのではないかと考えたのだ。それは「いつか来る終わりを見据える」という意味で、地域の「終活」といえるかもしれない。しかし、歳を重ねることで見えてくる風景や経験の共有、後世への継承など、この場所の将来における在り方を考えるという点で、前向きでもある。この試みが、直面する痛みを受け止めつつ、少しでも未来を探れるものになるよう願ってやまない。

桜井祐|TISSUE Inc.
共同設立者、編集者。1983年兵庫県生まれ。紙媒体やアートプロジェクトなど幅広い領域において企画・編集・ディレクションを行う。東京ピストル取締役を経て、2016年秋より自宅を福岡に移し、2017年クリエイティブディレクションを中心に行うTISSUE Inc. / 出版レーベルTISSUE PAPERSを設立。大阪芸術大学非常勤講師。

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