社説:防衛政策見直し イージスの検証が先だ

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 政府の国家安全保障会議(NSC)は本県、山口県を配備候補地とした地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の計画断念を決め、地上イージスに代わる新たなミサイル防衛政策の検討を開始した。年内に「国家安全保障戦略」を改定する方針だ。

 政府、自民党内では敵基地攻撃能力の保有に前向きな声がある。しかし、代替策の議論よりも地上イージスを巡る経緯をしっかりと検証し、責任の所在を明らかにするのが先ではないのか。反省すべき点を洗い出して今後の教訓にすることが、過ちを繰り返さないためには不可欠だ。

 政府が地上イージス導入を正式決定したのは2017年12月のことだ。陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)を「最適候補地」と位置付ける防衛省は、配備に不安を抱く地元の声に真摯(しんし)に耳を傾けることもせず、配備地周辺は安全であると主張して計画を進めてきた。

 断念自体は周辺住民らが望んだことであり、当然のことだ。しかし、今になって技術上の問題で周辺の安全を確保できなくなり、断念に至ったのは失態以外の何物でもない。

 当初から、トランプ米大統領による米国製品購入の要求に応じた「爆買い」との批判が根強かった。これまで米側と約1800億円の契約を結び、既に約200億円を支払っている。本県と山口の住民や自治体を振り回し、巨額の予算を投じた末に2年半という時間を無駄にした政府の責任は極めて重い。政府はこの点にどう対応するか明らかにするべきだ。

 安倍晋三首相は、弾道ミサイルの発射拠点を破壊する敵基地攻撃能力の保有に前向きな姿勢を示唆している。しかし公明党は、日本の防衛政策の原則である「専守防衛」を逸脱しかねないとして慎重な議論を求めており、保有には否定的な考えだ。政府、自民には、前のめりな議論にならないよう自制が求められる。

 歴代政権は他に防御手段がない場合に限り、敵国のミサイル発射基地を攻撃することは「自衛の範囲に含まれる」とする見解を踏襲してきた。ただし、敵基地攻撃能力は「専守防衛」の立場から保有しないとして米国に依存してきた。

 敵基地攻撃能力を保有することは専守防衛から逸脱し、憲法がうたう平和主義と戦争放棄に反する恐れがある。保有はあまりにも大きな政策の転換であるだけに、性急に議論を進めるべきではない。

 防衛政策とは、防衛装備の在り方を論じることに尽きるものではない。外交、通商なども含む多様な政策の中に位置付けられてこそ意味がある。

 そうした大局に立った多角的な議論が欠かせない。日本を取り巻く緊張関係を緩和し、武力行使を未然に防ぐ外交努力が何よりも重要だ。

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