社説:専門家会議改組 対策選択は政治の責任

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 政府は新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止する方針を決めた。感染症の専門家だけでなく、知事や危機管理の有識者、企業経営者ら幅広いメンバーを加えた新たな分科会として閣僚会議の下に設ける。

 専門家会議は科学的見地から助言する機関として設置された。2月の初会合以降、積極的に政府に対し提言し、政策決定へ大きな影響を与えてきた。

 しかし、「政策を決定しているような印象を与えた」との声が会議側からもあったため、今回の改組に至った。これまでの活動を振り返れば、前面に出ていた感は確かに否めない。

 ただ、後手後手の政府対応を会議側がもどかしく感じ、会見などで国民に直接訴えたのはやむを得なかったのではないか。「3密」回避や人同士の接触8割削減など計10回の提言発表がなければ、感染拡大がより深刻化した恐れもあったからだ。

 反省すべきは会議の提言と政治判断との関係が不透明だったことだろう。対策を誰がどう決めたのかがはっきりせず、その結果、責任の所在も曖昧になっていたように見えた。

 科学者らでつくる専門家会議の役割は本来、さまざまな選択肢とともに、それぞれの効果と問題点を提示することだ。中でも感染症や公衆衛生の専門家には、科学的知見に立った活発な議論を期待したい。

 一方、選択肢から対策を選んで理由を説明し、結果責任を負う。それが政治の役割であることを政府は肝に銘じるべきだ。

 対策の決定に際し政府は再三「専門家」を引き合いに出した。新型コロナ特措法の規定に従って意見を聞くのは当然だが、決定者はあくまでも政府だ。全国一斉休校要請では安倍晋三首相が独断専行し、学校現場が大混乱した。これに懲りた政府が、会議を「隠れみの」にしようとしたことはなかったのか。

 会議側にも反省すべき点がある。政府が議事概要にとどめ、発言を詳細に記した議事録を作成していなかった問題では、本人の希望で発言を削除できる仕組みがあることが判明。発言者名を「探られたくない」との声もあったという。結局、議事録作成は見送りとなった。

 会議で誰がどんな発言をし、どのような議論の末に提言に至ったのかは明らかにすべき情報だ。分科会でも議事録を作成し議論を検証することが欠かせない。それができなければ次の対策に生かすのも難しい。

 世界全体では死者が50万人を超え、感染者は1千万人を上回った。中南米で急増するなど沈静化の気配は一向に見えない。国内では今後、感染の第2波が懸念される。

 それだけに、まず専門家らが自由に議論できる場を設け、その内容を国民に極力公開する必要がある。政府はその意見に真摯(しんし)に耳を傾け、最も効果ある対策を主体的に選んで実行しなければならない。