社説:大曲の花火見送り 地域の財産、充実の機に

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 110年の歴史を誇る「全国花火競技大会(大曲の花火)」は今年の開催を見送り、来夏に延期されることになった。大仙市や大曲商工会議所などで組織する大会委員会が新型コロナウイルスの感染防止は難しいと判断した。大会が開催されないのは戦後では水害に見舞われた1947年以来となる。

 大曲の花火は競技大会としては国内最高峰。各地の大会での成績などを基に選抜された県内外の業者が腕を競い合う。8月の最終土曜日に行われ、昨年は全国から約75万人(主催者発表)が訪れた。

 今夏の大会に向け、主催者はさまざまな新型コロナ対策を検討しながら開催への道を探ってきた。だが、有料席以外の場所や公共交通機関などでの密集による感染を防ぐのは困難として最終的に見送りを決めた。県境間での往来自粛要請は全面解除されたが、首都圏を中心に新規感染者が増加しており、県外から多くの客を呼び込む大会の見送りは妥当な判断といえる。

 一方で、見送りの影響は計り知れない。大会の経済波及効果は150億円を超えるという試算もあり、宿泊や飲食、土産品など市内事業者が見送りで被る損失は甚大だ。新型コロナの影響で経済が疲弊しているだけに、見送りによる打撃を最小限に抑えなければならない。市や商議所は融資や補助制度の活用を積極的に事業者に促すとともに、事業継続に向けた相談、支援に努めてほしい。

 花火業者の支援にも力を注いでほしい。今夏の大会をはじめ、市内外の花火イベントの中止、延期が相次いでおり、売り上げは激減している。市や商議所は花火を活用した数々の地域振興策を推進中だ。貴重な地域ブランドを守るためのサポートは欠かせない。

 大会の開催日だった8月29日には主催者が事前予告なしのサプライズ花火を実施する。これとは別に市は今後、市内32の全小中学校近くで打ち上げる。臨時休校でつらい思いをした児童生徒らを励ます意味を込めるという。

 規模は決して大きくはないものの、こうした動きは花火業者を支援するだけではなく、市民が花火をより身近に感じられる契機ともなるだろう。小規模な打ち上げが定着すれば、花火観賞を目玉とする新たな旅行商品の開発などにもつながるのではないか。見送りを機に、かけがえのない地域の財産をさらに充実させる方策を検討してもらいたい。

 秋田市の竿燈まつりや鹿角市の花輪ばやし、羽後町の西馬音内盆踊りなども既に中止を余儀なくされている。今回の大曲の花火見送りで県内の夏の主要な祭り、イベントはほぼ全てが開催できないことになり、関係者やファンの落胆は大きい。新型コロナの収束はいまだ見通せないが、いずれも来年の開催を願わずにはいられない。