北斗星(7月5日付)

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 ゴムボートの上で、うつぶせになった男性が水に手を伸ばして新芽を摘み取る―。これは盛岡市のある沼でのジュンサイ収穫風景。先月下旬に岩手の地元紙に載った写真を見て、こんな摘み取り方もあるんだと驚かされた

▼ジュンサイは言わずと知れた三種町が誇る特産品。生産量は国産の9割を占めるとされる。ただ摘み取り風景は盛岡とは随分趣が異なる。箱形の木製の小舟に座った女性が、舟を少し前に傾けるようにして手際よく摘み取っていく

▼この小舟には80年を超える歴史がある。かつては「沼やため池に入り、どっぷりと水に漬かって摘み取りをしていた」(冊子「じゅんさい物語」)。それが1930年代後半に兵庫県の食品加工会社から栽培・加工技術が伝えられた折、小舟も一緒に導入された

▼現在、収穫作業を支えているのは主に高齢の女性たちだ。バランスを保つのが難しい小舟の上で、同じ姿勢を取り続けるのだから相当難儀な仕事だろう

▼ことしは春先の低温で生育が遅れ、収量はいまひとつ。追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染の影響による大都市圏の飲食店の休業や営業不振で、需要が伸び悩んでいるという

▼秋田市のスーパーの野菜売り場で袋詰めの生ジュンサイを見つけた。吸い物と酢の物にして並べると、いつもの食卓が少しだけ夏めいて見えた。冊子に写真付きで紹介されている鍋やてんぷらも食欲をそそる。いまが旬の味覚を楽しむことが産地への応援にもなる。

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