北斗星(7月8日付)

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 2024年度から新1万円札の顔となる実業家の渋沢栄一は、新潟県産の「佐渡赤石」をこよなく愛した。透明感のある光沢と深い朱色が特徴の銘石だ。渋沢は1888(明治21)年に東京・日本橋兜町に居を構え、縁起担ぎで重さ450キロもある赤石を置いて経済繁栄を祈った。転居先にも運び、生涯手放さなかったという

▼一時は都内の料亭に引き取られたが、3年前に兜町の東京証券取引所ビルを所有する平和不動産(土本清幸社長)が譲り受けた。兜町に戻った石は同社のロビーで独特の存在感を放っている。人工的なロビー内に天然の石があるだけで、何とも言えない安らぎが感じられる

▼東証は2001年に株式会社化され、由利本荘市矢島町出身の故土田正顕(まさあき)さんが初代社長になった。その縁で矢島中学校の生徒はここ数年、修学旅行で兜町を訪れている

▼生徒はこの石に触れるのが恒例だ。「生徒には『渋沢のパワーを感じ、世界に羽ばたいて』とエールを送る」と土本社長。東証と矢島の縁を大切にするその心意気に胸を打たれた

▼平和不動産は天然素材の癒やし効果を生かして兜町の再開発を進める。先月は東証近くに矢島産秋田杉を使ったウッドデッキやベンチを設置。「木は香りも肌触りもいい。街に潤いをもたらす」(土本社長)

▼コンクリート造りのビルが並ぶ大都市で杉製品は一服の清涼剤。秋田ブランドの発信につながる。癒やしの空間に「秋田」を売り込む余地はまだまだありそうだ。