北斗星(7月11日付)

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 「オリンポスの果実」(田中英光著、新潮文庫)は、1932年ロサンゼルス五輪ボート競技に学生選手として出場した著者が自らの体験を基に書いた小説。五輪選手同士の淡い恋愛模様が描かれる

▼本紙では県ボート協会会長の伊藤次男さん(78)の「時代を語る」を連載している。本荘高でボート競技を始めた伊藤さんは、中央大の学生時代に東京五輪に出場した。その当時の思い出を語った10~16回を読んでいて、高校時代に手に取ったこの小説を思い出した

▼伊藤さんの種目は最もスピードがあり、ボート競技の花形ともいわれる「エイト」。漕手(そうしゅ)8人の1人に選ばれた。しかし体力に勝る欧米勢の壁は厚く、結果は10位だった

▼小説の方の出場種目もエイトで、主人公は先頭から数えて4番目の漕手。伊藤さんは6番目だったが、どちらも体力が求められるエンジン役のポジションだ。力及ばず決勝進出を果たせなかった点も共通する

▼連載では伊藤さんが1人乗りのシングルスカルに種目を変えてメキシコ五輪を目指そうとしている。その挑戦はさらにミュンヘン五輪へと続いていく。それにしても3大会連続の五輪出場は偉業というほかない

▼伊藤さんのボート人生の一端を知ることで、なじみのなかったボート競技に親しみが湧いてきた。収まる気配のない新型コロナウイルス感染拡大を封じ込められるかどうかが気掛かりだが、来夏に延期された東京五輪では力尽きるまでこぎ続ける選手らを応援したい。

伊藤次男さんに半生を語ってもらいました

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