社説:県内の障害者雇用 一層促進し定着を図れ

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 県内ハローワークを通じて企業や自治体に就職した昨年度の障害者数は延べ913人となり、10年連続で過去最多を更新した。ハローワークが受け付けた新規求職申し込みも延べ1618人と過去最多となった。

 障害の有無にかかわらず誰もがその能力と適性に応じて働き、地域で自立した生活を送ることができるのが「共生社会」である。障害者の就職の伸びは、その実現に向けて確実に前進している証しと言えよう。

 統合失調症や双極性障害(そううつ病)など精神的な障害がある人の就職が、大幅に伸びて全体を押し上げた。精神障害者の新規求職申し込みは10年で3倍となり、就職は4倍の延べ399人に増えた。いずれも障害種別で最も多い。

 かつて精神疾患は、症状に個人差や体調の波が大きく、身体障害や知的障害に比べて働くのが難しいと考えられていた。しかし近年は薬の開発とともにケアの手法も進歩し、全国的に働く人が増えてきた。

 一方で県内の障害者雇用率に注目すると順調とは言い難い。2012年に1・56%と全国最低になったため、秋田労働局などは経済団体に働き掛け、「採用ゼロ人企業」への指導も徹底した。以降7年間連続して過去最高を更新、昨年は2・14%となったものの、現行の企業の法定雇用率2・2%を下回っており、全国では33番目の低さだ。

 法定雇用率の対象企業は従業員が45・5人以上。県内では766社のうち4割が未達成にとどまる。本年度末までに法定雇用率は0・1%引き上げられ、対象企業は従業員数43・5人以上に拡大されるため、一層の雇用促進が必要だ。

 障害者雇用をさらに進めるには企業との相互理解が欠かせない。障害者に希望する仕事があっても実際にどこまでできるかお互いに不安だろう。「大手に比べ受け入れ態勢に余裕がない」「適した業務がないことや社員の理解不足に悩んでいる」といった中小企業の声もある。

 そこで大切になるのが障害者が事前に職場体験することだ。県内8カ所の障害者就業・生活支援センターを窓口に行われている。直接触れ合うことで相互理解が進むことから、積極的な活用を期待したい。

 就職後の定着も重要な課題だ。17年に発表された全国調査によると、精神障害者の就職1年後の定着率は5割未満。同じ職場で障害者が長く働き続けられるよう、その体調に合わせて柔軟な職場環境を提供することが企業側には求められている。

 新型コロナウイルスにより経済は打撃を受けているものの、その影響が障害者雇用に及ぶようなことがあってはならない。障害者雇用の推進は、多様な働き方を認める社会の実現につながる大切な取り組み。障害者だけでなく、さまざまな人が無理なく働くことができる職場をつくることが必要だ。