社説:骨太方針 長期戦略を明確に示せ

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 政府は経済財政運営の指針「骨太方針」を閣議決定した。新型コロナウイルス感染拡大を受けた対策に主眼を置いた内容になったのは当然だろう。一方、眼前の対策にとどまり、その先にある国の未来を見据えた視点が希薄なのは残念だ。

 方針では感染拡大防止と経済活動の両立を図る「新たな日常」への刷新が強調された。ただコロナ対策の内容に目新しさはなく、感染拡大によって表面化した反省点、これまで目標に掲げながら十分に成果を上げられなかった政策も目立つ。

 PCR検査体制の充実、医療提供体制の強化、治療薬・ワクチンの開発加速、保健所の体制強化などがコロナ対策として盛り込まれた。充実・強化とはいうものの、これらは保健所の設置数、常勤職員数を抑制し、検査を担う地方衛生研究所の予算などを削減してきた反省の裏返しにすぎない。

 デジタル化の推進も大きな柱で、遅れが目立つ行政分野を中心に今後1年間で集中的に取り組む。批判にさらされた持続化給付金や国民一律10万円給付の支給遅れ、ファクスによる紙ベースで行われていた感染者情報の把握の仕組みなどをにらんだ当たり前の改善にも映る。

 東京一極集中の是正は、感染症に対する人口密集地リスクの顕在化を受けて盛り込まれた。地方の就労環境を整備し、テレワークの定着を図るという。長年叫ばれ続けている一極集中の是正が実現に近づくどころか、後退している現実を思えば容易ではないだろう。

 方針の主な柱からは第2次安倍政権下で打ち出された改革が進んでいない現状が浮き彫りになっている。その反省や検証なしに成果を上げるのは難しいのではないか。

 従来と異なり、2025年度に国・地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する財政健全化の目標を明記しなかった。コロナ感染防止の優先が理由だが、対策費の巨額支出で達成は困難だ。西村康稔経済再生担当相は「今は財政(健全化)を気にしていたら国民の雇用、生活を守れない」と述べている。

 コロナ禍による経済への打撃が深刻なのは分かるが、財政健全化を棚上げしてよいことにはならない。合計60兆円近い大規模な補正予算も全額国債で賄われた。「100年に1度の危機」ではあっても財政悪化対策は今から考えておくべきだ。

 国土強靱化(きょうじんか)を巡る記述が大幅に追加されたことにも留意したい。防災や減災の大切さは言うまでもないが、そのために費やすことのできる予算が無尽蔵にあるわけではないのだ。

 全国で人口減少、少子高齢化が進む。負担の担い手が減る一方なのに財政規律を軽んじるわけにはいかない。目の前に難題が山積しているにせよ、コロナ禍後の未来を描く長期戦略を可能な限り明確に示し、実行していくことが求められる。

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