社説:九州豪雨1カ月 気象予測、避難の検証を

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 熊本県南部を中心に九州に甚大な被害をもたらした豪雨から1カ月がたった。球磨川が氾濫して被害の大きかった同県球磨村では仮設住宅の入居が始まったが、被災家屋や施設の復旧はこれからだ。九州だけで70人超が犠牲になった今回のような被害が繰り返されないよう、気象予測や避難方法などに問題はなかったか、検証を進める必要がある。

 今回の豪雨には二つの特徴があった。一つは梅雨前線に暖湿気が流れ込み、積乱雲が連続的に形成される「線状降水帯」が発生したこと。もう一つは梅雨前線が長期にわたって停滞し、西日本だけでなく本県や山形県も含む広範な地域に記録的な大雨をもたらしたことだ。

 地球温暖化によって日本付近の気温や海面水温が上昇し、豪雨が増えたり、豪雨シーズンが早まったりする恐れがあると専門家は指摘している。豪雨の予測の精度を上げるための研究や技術開発を急がなければならない。

 死亡者の大半は球磨川流域の高齢者だった。特別養護老人ホームでは14人が犠牲となった。施設側の対応や災害に備えた体制に問題がなかったかどうかを洗い出し、今後の豪雨時の対策に反映させたい。

 一方、施設の立地場所が浸水想定区域であると同時に土砂災害警戒区域だったことや、迅速な垂直避難を可能にするエレベーターがなかったことなど、ハード面の問題も指摘されている。6月に成立した改正都市計画法は、病院や福祉施設は土砂災害などの危険が高い地域への建設を認めないとした。

 しかし、既存施設に対しては補助金で移転を促すだけで強制力はなく、同法の施行も2年後だ。エレベーターの整備や居室を全て2階以上にするなどの改築、改修への支援も含め、対策を加速するべきだ。

 復旧活動には新型コロナウイルスが大きな影を落としている。熊本県は感染防止のため、県外ボランティアの受け入れを見送っている。人手不足のため、職員や県内ボランティアの派遣先は住宅を優先し、店舗などは後回しという。

 感染者が出た場合、復旧作業を中断させなければならない恐れがある。重症化しやすい高齢者などに感染が広がる事態は避けなければならない。

 県外ボランティアの受け入れが困難なのは理解できる。だが人手不足では復旧はままならない。感染防止に万全を期した上で自衛隊の派遣を増やすなど、あらゆる可能性を考慮して住民らの負担軽減を図るのが国と自治体の責務だ。

 その上で、ボランティア希望者にPCR検査を徹底するなどして、受け入れ体制を構築できないだろうか。国と自治体による支援に加え、コロナ禍時代のボランティアの在り方を早急に確立することで一日も早い復旧につなげたい。

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